高良山の久留米森林つつじ公園(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
プロ野球のクライマックスシリーズやJリーグのチャンピオンシップ、いわゆるプレーオフ制は「怪しい王者」を生み出すリスクを制度に内包している。今季はプロ野球はソフトバンク、Jリーグは広島という誰からも後ろ指を指されないチャンピオンが誕生して本当に良かったと思う。
レギュラーシーズンの後にプレーオフを行って頂点を決めるやり方は米国のプロスポーツでは当たり前。それが理にもかなっている。米大リーグならリーグを2つに分割した上でさらに東、中、西と地区にも分けてレギュラーシーズンを戦う。リーグの垣根を越えた交流戦などはあるが、どのチームがその年に一番強いかは結局プレーオフをしないと分からない。
球団数の多さを逆手にとって群雄割拠の状態にあえて置き、プレーオフという「天下統一」の夢の階段を上らせる。そんな中国の春秋戦国時代と一脈相通じるような構造を見るにつけ、「よくできているなあ」と感心するのである。
それに比べると我が方のプレーオフは、一回り対戦して全部の格付けが済んだ後に屋上屋を架すように行われる。成績的には本来、王を名乗る資格のない者が頂点に立つ可能性もあり、「僭称(せんしょう)」というカビくさい言葉さえ突きつけたくなる。
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武智編集委員は「それに比べると我が方のプレーオフは、一回り対戦して全部の格付けが済んだ後に屋上屋を架すように行われる」と米国との違いを嘆く(ちなみに、Jリーグはともかく日本のプロ野球は「全部の格付けが済んだ後」のプレーオフとは言い難い)。しかし、米大リーグのプレーオフの仕組みを知っていれば、こんな書き方はしないだろう。
2015年のナリーグを例に取ろう。中地区1位のカージナルスに加えて、同2位のパイレーツ、同3位のカブスがプレーオフに進出。カブスはパイレーツとカブスを相次いで破り、リーグ優勝決定シリーズに進出した。ここで敗退するが、カブスがワールドシリーズを制していれば、武智編集委員の言う「怪しい王者」が誕生していた。中地区3位という結果が出ているのに、プレーオフでさらに中地区の上位チームと対戦するのは、まさに「屋上屋を架す」やり方だろう。
プレーオフ進出へのハードルの高さに差はあっても、「『怪しい王者』を生み出すリスクを制度に内包している」点で、日本のプロ野球も米大リーグも同類だ。地区3位でもワールドシリーズの勝者となれる米大リーグを「成績的には本来、王を名乗る資格のない者が頂点に立つ可能性」がないと武智編集委員は言い切れるのか。
今回のコラムでは日米のプレーオフを比べているものの、日本は「プロ野球のクライマックスシリーズやJリーグのチャンピオンシップ」が出てくるのに、米国は「米大リーグ」だけだ。これではバランスが悪いので、米国のプロサッカーのプレーオフにも目を向けてみよう。
11月13日のスポニチの記事では以下のように書いている。
【スポニチの記事】
今年20チーム体制となったMLSは全34ゲームのレギュラーシーズンの結果により、イースタンとウェスタンの2カンファレンスから上位6チームずつがプレーオフを争っている。
プレーオフはトーナメント方式で、各カンファレンスの3位と6位、4位と5位がワンゲーム・マッチの1回戦を行い、その勝者が1、2位チームと2回戦を、そしてその勝者同士でカンファレンス・チャンピオンをいずれもホーム&アウェー形式で争う。そのうえで最終的なMLS王者を決めるのが恒例のMLSカップで今年は12月6日の開催が予定されている。
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これだと各カンファレンス6位でも王者になれる。やはり「成績的には本来、王を名乗る資格のない者が頂点に立つ可能性」があり、武智編集委員の言う「怪しい王者」が誕生しやすい。「怪しい王者」を作らないようにしたいならば、各カンファレンス1位同士が戦って雌雄を決すれば済む。しかし、そうはなっていない。
武智編集委員に改めて問いたい。「それでも米国のプロスポーツのプレーオフを『よくできているなあ』と思いますか。米国では『怪しい王者』が生まれる心配はないのですか」。
※記事の評価はD(問題あり)。武智幸徳編集委員への評価もDを維持する。
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