2015年12月21日月曜日

日経 小平龍四郎編集委員の拙さ感じる「けいざい解読」(1)

20日の日本経済新聞 朝刊総合・経済面に小平龍四郎編集委員が無理のある記事を書いていた。「けいざい解読~株価支える統治改革 次の課題は取締役会」という記事によると、「企業統治改革の進展」が株価上昇の要因になっているらしい。しかし、よく考えてみると合点がいかない。

水天宮(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です
まずは記事の前半部分を見てみよう。

【日経の記事】

安倍晋三首相が2012年12月26日に再び政権を握ってから間もなく3年が経過する。アベノミクス(安倍内閣の経済政策)には批判も増えてきたが、こと株式市場の見方は決して悪くない。

日経平均株価は12年末から今年12月中旬までに約80%上昇。同期間の米ダウ工業株30種平均や独DAX指数の上昇率を大きく上回った。2016年も日本株の堅調を予想する声は多い。

株価上昇の理由として多くの市場関係者があげるのは「企業統治(コーポレートガバナンス)改革の進展」だ。ゴールドマン・サックス証券のキャシー・松井氏は「日本株のストラテジストを25年間続けているが、一番の驚きはアベノミクスでガバナンス改革が進んだことだ」と語る。

改革が進んだ直接のきっかけは、今年6月から東京証券取引所が上場企業に「企業統治指針」を適用したことだ。同指針は「社外取締役の選任」や「株主との対話促進」など73の原則から成る。全体として企業経営に市場の規律を反映させようとする内容のため投資家が歓迎した。

金融庁は指針適用の実態を調べるためのフォローアップ会合を開いている。9月に東証が会合に提出した資料によると、2人以上の社外取締役を選任する一部上場企業の割合は全体の48%と、過去5年間の平均(16%)の3倍になった。

統治指針の適用で企業の姿勢が急激に変化した今年を投資家が「ガバナンス改革元年」と好意的に呼ぶのは、そうした実例に基づく。

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記事を素直に解釈すれば「6月からの企業統治指針の適用→企業統治改革の進展→株価上昇」という流れが起きたのだろう。しかし6月に2万円を超えていた日経平均株価は、今や1万9000円前後まで下げている。企業統治指針の決定が3月5日のようなので、この時期まで遡ってみても、株価は現在とほぼ同水準だ。

小平編集委員が言うように「改革が進んだ直接のきっかけは、今年6月から東京証券取引所が上場企業に『企業統治指針』を適用したこと」であり、「統治指針の適用で企業の姿勢が急激に変化した」のであれば、この半年で株価はもっと上がってよいのではないか。

そもそも株価の変化を見る期間が適切だとは思えない。記事では「日経平均株価は12年末から今年12月中旬までに約80%上昇」と書いた上で、株価上昇の要因を「企業統治改革」に求めている。しかし、今年が「ガバナンス改革元年」ならば、株価も今年をベースに見るべきだ。ここ1年以内の動きで過去3年間の株価上昇を説明するバランスの悪さに小平編集委員は気付かないのだろうか。

「政権発足当初から企業統治改革の動きがあって、それが株価の上昇を支えてきたんだ」と言いたいのならば、記事中でそこをしっかり説明すべきだ。今回のような書き方には、どうしても拙さを感じてしまう。

この記事には他にも問題を感じる。残りは(2)で述べる。

※(2)へ続く。

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