大濠公園(福岡市中央区) ※写真と本文は無関係です |
【日経ビジネスの記事】
2012年末に誕生した安倍晋三政権は昨年、投資家の行動指針を定めたスチュワードシップ・コードなどを制定。かつて「もの言わぬ株主」と言われた大手生命保険会社が投資先企業との対話を充実させ、ROE(自己資本利益率)の向上などを求めるようになった。
挑発するような物言いの村上氏と機関投資家には、企業との対峙の姿勢に違いがある。しかし企業に対する要望は似たようなもので、村上氏のスタイルに時代が追い付いてきたとも言える。
そのタイミングでの強制調査。なぜ、当局は村上氏に再び目を付けたのか。容疑の詳細は明らかにされていないが、市場では東京スタイルなどを傘下に持つTSI株の今年夏の値動きから、大量の空売りを仕掛けて株価を下げる「売り崩し」や、市場の引け近くに低い値段の注文を出して終値を意図的に下げる「終値関与」が疑われている。
市場関係者が注目するのは、金融庁の意向だ。「最近、アクティビストと呼ばれるファンドの動きが活発になっている。それも影響しているのだろうか」。米国のヘッジファンド、インダス・キャピタル・アドバイザーズ代表のハワード・スミス氏はこう言う。
----------------------------------------
「アクティビストと呼ばれるファンドの動きが活発になっている」のはいいとしても、それをなぜ金融庁が警戒するのか謎だ。記事によれば「村上氏のスタイルに時代が追い付いてきたとも言える」らしい。ならば、アクティビストの動きが活発になっても、金融庁は懸念を抱かなくなるのが自然だ。もちろん、そうならない場合もあるだろう。安倍政権の意図と金融庁の方向性にズレがあっても不思議ではない。
ただ、記事にはそこの説明がない。そもそも金融庁がアクティビストの動きを警戒しているのかどうかも漠然としている。記事の中で唯一の根拠はインダス・キャピタル・アドバイザーズ代表のハワード・スミス氏のコメントだ。と言っても同氏は「それも影響しているのだろうか」と言っているだけだ。これだと「よく分からないけど何か関係があるのかなぁ」といったレベルの話だ。
記事の最後を田村編集委員は次のように結んでいる。
【日経ビジネスの記事】
「株を安く買えるのが何より好きな人」。村上氏をよく知る人物は、その手口の裏に同氏の性格もあるのではと見る。村上氏の動きが、アクティビストの復活に神経をとがらせる当局の警戒感を誘った可能性は十分にある。
----------------------------------------
何が言いたいのか分かりにくい部分もあるが、田村編集委員としては「村上氏の動きが、アクティビストの復活に神経をとがらせる当局の警戒感を誘った可能性は十分にある」と感じているようだ。しかし、記事中にその根拠は見当たらない。強いて上記のくだりから推測すると、村上氏が「株を安く買えるのが何より好きな人」だから金融庁は村上氏を警戒するようになったのだろう。
これも謎だ。株式に投資する上で「株を安く買えるのが何より好きな人」であっても何の問題もない。逆に「少しでも高く買いたい」という人がいたら会ってみたい。株を安く買うのが好きな人が株を安く買おうとすると金融庁という役所は警戒するのだろうか。違うとは言わないが、もしそうなら「なぜ警戒するのか」を田村編集委員は解説すべきだ。
ついでに1つ指摘しておきたい。「村上氏をよく知る人物は、その手口の裏に同氏の性格もあるのではと見る」と書いているが、これはまずい。今回の件では具体的に村上氏のどういう取引が問題となっているのかよく分からない。田村編集委員も「容疑の詳細は明らかにされていない」と述べている。具体的な手口が分からないのに「その手口の裏に同氏の性格もあるのでは」というコメントを載せるのはどういう了見なのか。
記事のレベルの低さに同情の余地は乏しい。(1)強制調査が明らかになってから執筆までに時間的な余裕があった(2)「主任編集委員」というご利益のありそうな肩書を付けて書いている(3)「時事深層」という深い分析記事であることをアピールするようなタイトルを付けている--といった点を考慮すると、容認できる出来ではない。
記事には「金融庁がアクティビストを警戒しているのか」を探った形跡が見当たらない。本来ならば金融庁関係者のコメントが欲しいところだ。その上で、時代の流れに逆らうような「警戒感」をなぜ金融庁が抱くのか、田村編集委員なりの分析を示してほしかった。どちらも無理ならば「主任編集委員」の肩書は返上すべきだ。
※記事の評価はD(問題あり)。田村賢司主任編集委員の評価もDを据え置く。田村編集委員については「間違い続出? 日経ビジネス 田村賢司編集委員の記事」も参照してほしい。
0 件のコメント:
コメントを投稿