2015年8月2日日曜日

女性面ゆえの緩さ? 日経「なでしこ融資、成長の原動力」

日経朝刊「女性面」の記事は、とにかく女性に関する話題を前向きに紹介すればいいという緩い作りなのだろう。とは言え、さすがに緩すぎるような…。1日の「なでしこ融資、成長の原動力」という記事を題材に、問題点を探ってみよう。

まず「なでしこ融資」に関する説明が不十分だ。記事では以下のように書いている。

【日経の記事】


アムステルダムのフォンデル公園 ※写真と本文は無関係です
女性が力を発揮する企業を、融資を通じて支援する金融機関の動きが広がっている。「なでしこ融資」は企業の新たな成長の芽として注目を集める。


北陸新幹線開業に沸く金沢で、日本政策金融公庫と金沢信用金庫が協調融資スキーム「なでしこ輝き」を1月に始めた。女性経営者がいたり、女性を積極的に雇用したりする企業に特化して融資する

第1号案件は、もなかの皮を製造する創業1877年の老舗、加賀種食品工業(金沢市)だ。13年前に6代目に就いた日根野幸子社長は「女性従業員を意識的に雇用してきた」と振り返る。もなかの皮を洋菓子に使う方法を提案、売り上げは社長就任前に比べて4割伸びた。従業員は約230人とほぼ2倍に。増えた従業員の大半は女性で、今では全体の8割を占める。


女性経営者がいたり、女性を積極的に雇用したりする企業に特化して融資する」のが「なでしこ輝き」らしい。しかし、融資基準を満たしているのならば、普通に融資すれば済む話ではないか。本来なら融資できないが、女性経営者がいたり、女性を積極的に雇用したりといった特徴を評価して特例的に融資するのが「なでしこ輝き」ならば分かる。貸出金利を特別に低くするといった特典が付いてもいいだろう。

ところが記事を読んでも、なぜ普通に融資しないで「なでしこ輝き」にするのか判然としない。「融資を受けたことで女性の働きやすさを訴えられたらいい」と語る女性社長が途中で出てくるので、そういうアピール効果はあるのは分かるが、他は「なでしこ輝き」である必然性が感じられない。「女性が力を発揮する企業を、融資を通じて支援する金融機関の動きが広がっている」という話を記事の柱に据えたのだから、制度面の説明はしっかりしてほしかった。

他にも記事には気になる点が多い。列挙してみる。


◎偏見?

【日経の記事】

第1号案件は、もなかの皮を製造する創業1877年の老舗、加賀種食品工業(金沢市)だ。13年前に6代目に就いた日根野幸子社長は「女性従業員を意識的に雇用してきた」と振り返る。もなかの皮を洋菓子に使う方法を提案、売り上げは社長就任前に比べて4割伸びた。従業員は約230人とほぼ2倍に。増えた従業員の大半は女性で、今では全体の8割を占める。

女性は「皮を焼いたり袋詰めしたり、きれいな仕事をする」。複数の生産ラインを経験し、誰かが子どもの発熱などで急に休んでも周囲がカバーできるなど、「働きやすい仕組みを整えている」(金沢信用金庫)点が評価を受ける。


社長はそう言っているのだろうが「(女性は)皮を焼いたり袋詰めしたり、きれいな仕事をする」というのは偏見の類だろう。「男性はきれいな仕事があまりできない」という統計的な根拠があるなら別だが、そうではないのなら、こういうコメントは使うべきではない。日本のメディアは男性蔑視的な表現に寛容とはいえ、原則として男女平等のはずだ。それを忘れないでほしい。


◎説明不足の連続

【日経の記事】

「なでしこ輝き」には、日本公庫内で異例の速さで商品化した先行事例がある。14年10月に東京都民銀行の女性企画営業推進チーム「さくら姫」との連携から生まれた協調融資スキーム「Lady Go!」だ。

きっかけは同年5月、さくら姫と日本公庫の女性活躍推進に携わる職員との情報交換会で出た悩みだ。「メーカーなどでは女性社員の声から製品化の例が増えているが、金融機関ではメリットが外に見えにくい」(日本公庫の村越千夏子室長代理)。「数字で示せる融資商品ができれば金融における女性活躍はもっと前に進める」(都民銀の神津真由子審議役)

両行の思いは一致し、7月には協調融資の商品開発に発展した。日本公庫の谷口幸裕東京支店長は「最初は『夢物語』と思った」という。新規の融資商品の開発はマーケティングの手間や両行トップの承認などハードルは決して低くない。それでも通常1年程度かかるところ、3カ月の速さで商品化を達成した。


「女性の声を生かしても、金融機関ではメリットが外に見えにくい」と思われているのならば、女性主導の商品開発は難しそうだが、なぜか異例の速さで「Lady Go!」の商品化を達成してしまう。「本来は実現が困難なはずなのに、なぜ簡単に話が進んだのか」は説明すべきだろう。

数字で示せる融資商品ができれば金融における女性活躍はもっと前に進める」というコメントも、何となく言いたいことは分かるが、妙な話だ。まず「数字で示せる融資商品」は既にあるはずだ。逆に「数字で示せない融資」があるなら教えてほしい。それに「数字で示せる融資商品」がなぜ「女性活躍の推進」につながるのかも説明がない。「『Lady Go!』は女性行員だけが融資決定の権限を握っている」といった条件があるのならば、記事中で明示すべきだ。


◎不自然なコメント

【日経の記事】

日本公庫東京支店融資第1課の田口彰子さんは「Lady Go!」の商品開発から第1号案件まで携わってきた。「今後は男性社長でも女性従業員を増やし、この制度を利用しようという企業をもっと広げたい」と話す。


今後は男性社長でも女性従業員を増やし、この制度を利用しようという企業をもっと広げたい」というコメントは日本語として不自然だ。何が言いたいのか明確には分からないが、改善例を示すならば「男性社長の下で女性従業員を増やそうとしている企業も含め、今後はこの制度の利用をさらに広げたい」といったところだろうか。


この完成度で許されるならば、仕事としては楽だ。しかし、筆者である2人の女性記者のためにはならない。「女性面なんだから、女性を持ち上げれば出来上がり」といった安易さにあふれる紙面作りは根本から見直してほしい。今回の記事の評価はD(問題あり)。浜美佐、天野由輝子の両記者に対する評価も暫定でDとする。

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