2015年6月8日月曜日

東洋経済 「短期志向に一石投じるオリックス」への疑問

週刊東洋経済6月13日号にオリックスの記事が出ていて「オリックスは増配には前向きだが、手元資金が減る自社株買いには否定的スタンス」といった趣旨の解説がされていた。しかし、配当でも自社株買いでも同じように手元資金の減少要因になる。東洋経済に問い合わせをしたら、素早く回答が返ってきた。質問と回答を紹介する。


【東洋経済への質問】
アントワープ中央駅(ベルギーのアントワープ)
                        ※写真と本文は無関係です

東洋経済6月13日号の記事「短期志向に一石投じるオリックス」についてお尋ねします。記事中で同社に関して「このバランスを考えると、ROEの向上につながるが手元資金が減る自社株買いには否定的なスタンスをとらざるをえない」と解説されています。一方で「6期連続で増配しており、過去最高純益を更新した前期は3年前の4倍に相当する36円」などと、増配に動くオリックスにも言及しておられますが、あまり整合しません。「ROE向上につながるが手元資金が減る」というのは、自社株買いでも増配でも同じです。手元資金を減らしたくないから自社株買いに否定的ならば、増配にも否定的でしょう。しかし、記事にもあるように、予想中間配当をベースに考えると、今期も増配の可能性が高そうです。どう理解すればいいのか教えてください。

ついでに、記事中で気になった表現をいくつか指摘しておきます。「配当金はその後6期連続で増配しており」とのくだりに出てくる「配当金は増配」との表現はダブり感があります。「配当金はその後6期連続で増やしており」とした方がよいでしょう。

「株式投資家と格付け会社を含めた債券投資家」との書き方も引っかかります。最初は「『株式投資家と格付け会社』を含めた債券投資家」と読んでしまいました。読点を使って「株式投資家と、格付け会社を含めた債券投資家」とするなどの工夫が要ります。

さらに言えば「格付け会社を含めた債券投資家」との説明も気になります。格付け会社は明らかに「投資家」ではないからです。例えば、「株式投資家が格付け会社と債券投資家の対極に位置し、中央にオリックスがいる」と直せば、問題は解消しそうです。



【東洋経済の回答】

お問い合わせの点について、以下のように回答いたします。まず、「手元資金を減らしたくないから自社株買いに否定的ならば、増配にも否定的なはずではないか」とのご指摘についてです。

オリックスの場合、38ページにあるJPモルガン証券の辻野菜摘アナリストのコメントにもあるように、投資家の間は配当利回り、さらには配当性向に不満があり、増配と併せて自社株買いの実施を求める声があります。

そのような声に対して、オリックス側としては、①今期(16年3月期)も予想されるように増配はする、②ただ、自社株買いについては手元資金がさらに減ることを考えると行うわけにはいかない--と考えているわけです。

オリックスが増配と同時に自社株買いも求められているという点については、きちんと伝わるような記述になっていなかったかもしれません。本文の表現に関するご指摘と併せて、貴重なご意見として今後の記事執筆の参考にさせて頂きたいと思います。

ありがとうございます。

引き続き、弊誌をよろしくお願い致します。




実際のところ、この回答の通りだろう。「増配はするけど、自社株買いまでは勘弁。あんまり財務体質を痛めてもね…」とオリックスは考えているのだとは思う。ただ、「ROEの向上につながるが手元資金が減る自社株買いには否定的なスタンス」と解説されると、「それは増配も同じだろ」とツッコミを入れたくなる。

とは言え、「債券投資家は株主還元の強化に怒っている」など、あまり語られない視点から記事を書いており、全体としては興味深く読めた。迅速で真摯な対応にも感謝したい。

※記事の評価はCとする。

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