2022年3月23日水曜日

FACTA「『追加接種』遅延で『大量死』招いた元凶」に感じた上昌広 医療ガバナンス研究所理事長の怪しさ

FACTA4月号に医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏が書いた「『追加接種』遅延で『大量死』招いた元凶」という記事には問題を感じた。この見出しからは「追加接種」の「遅延」がなければ「大量死」は防げたという印象を受ける。しかし中身を見ると、どうも怪しい。

夕暮れ時の筑後川温泉

当該部分を見ていこう。

【FACTAの記事】

オミクロン株感染による死亡者が増加している。今年に入り、既に6427人が亡くなった(3月6日現在)。2月22日の死者数は322人で、第5波までのピークの216人(昨年5月18日)を大きく上回っている。

なぜ、こんなに亡くなるのだろうか。それは、追加接種が遅れたからだ。追加接種は、オミクロン株対策の要だ。米ロサンゼルス市によれば、追加接種により感染リスクは44%、入院リスクは77%減少した。ところが、英オックスフォード大学が提供するデータベース「Our World in Data」によれば、日本の第6波のピークである2月9日までに追加接種を終えていたのは、国民の7.9%に過ぎなかった。昨年9月現在の日本の高齢化率(65才以上人口の割合)は29.1%だから、7割以上の高齢者が追加接種を受けることなく、第6波を経験したことになる。

主要先進7カ国(G7)における、オミクロン株流行のピークの時点での追加接種完了率は、高い順に独(55.1%)、英(51.1%)、仏(46.7%)と続く。日本についで低い米でも25.2%の国民が接種を終えている。米国の高齢化率は16.6%だから、日本以外のG7諸国は、オミクロン株流行前に高齢者の接種を終えていたことになる


◎根拠になってる?

なぜ、こんなに亡くなるのだろうか。それは、追加接種が遅れたからだ」と断定しているものの、まともな根拠は示せていない。「米ロサンゼルス市によれば、追加接種により感染リスクは44%、入院リスクは77%減少した」とは書いている。だが死亡リスクの低減効果には触れていない。これでは「なぜ、こんなに亡くなるのだろうか」に対する答えは出せない。しかも「米ロサンゼルス市」のデータだ。なぜ日本で見ないのか。

追加接種完了」者と、それ以外を比較すると感染者の致死率はどうなるのか。まずは、そこが知りたい。

日本以外のG7諸国は、オミクロン株流行前に高齢者の接種を終えていたことになる」とも上氏は書いている。となると人口比で見た日本の死亡者は「G7」の中で圧倒的に高くなるのが自然だ。しかしネットに出てくるデータを見ると、米国は2月の段階で新規の死者数が3000人を超える日がある。人口比で見ても日本より米国の方がはるかに死亡者が多い。

追加接種で先行した韓国の悲惨な状況などを含めて考えると「追加接種」に大した効果はなさそうだ。むしろ「追加接種」が死亡者を増やすと見る方が無理がない。

医療ガバナンス研究所理事長」という肩書から推測すると、上氏もこの辺りの状況は把握しているはずだ。なのに、「なぜ、こんなに亡くなるのだろうか。それは、追加接種が遅れたからだ」と言い切ったのか。そこに胡散臭さを感じる。


※今回取り上げた記事「『追加接種』遅延で『大量死』招いた元凶」https://facta.co.jp/article/202204022.html


※記事の評価はD(問題あり)

0 件のコメント:

コメントを投稿