日経ビジネス3月14日号に山川龍雄編集委員が書いた「ニュースを突く~日本は極東のウクライナ」という記事は説得力がなかった。中身を見ながら、あれこれツッコミを入れてみたい。
耳納連山に沈む夕陽 |
【日経ビジネスの記事】
人口約4000万人の主権を持った国家、ウクライナが侵攻を受けた。暴挙に出たのは、国連の拒否権を持つ安全保障常任理事国、ロシアだ。厳しい制裁を受けると、プーチン大統領は核兵器の使用までほのめかした。
◎「国連の拒否権を持つ安全保障常任理事国」?
まず言葉の使い方。「国連の拒否権を持つ安全保障常任理事国」が引っかかった。「国連の拒否権」が舌足らずだし「安全保障常任理事国」とはあまり言わない。「安保理常任理事国」だろう。これを踏まえて直すと「国連の安全保障理事会での拒否権を持つ常任理事国」といったところか。
続きを見ていく。
【日経ビジネスの記事】
我々は第2次世界大戦以来、見なかったような光景を目の当たりにしている。軍事大国の独裁者が理性を失えば、地球規模の危機に発展しかねないことを改めて思い知った。軍事侵攻と経済制裁のチキンレースの行方は誰にも分からない。
◎「第2次世界大戦以来、見なかったような光景」?
ここでは「我々は第2次世界大戦以来、見なかったような光景を目の当たりにしている」という説明が引っかかった。悲惨な戦争は「第2次世界大戦」の後も繰り返し起きている。シリア内戦は記憶に新しい。山川編集委員は何を指して「我々は第2次世界大戦以来、見なかったような光景」と言っているのか。
今回の記事で最も気になったのが以下のくだりだ。
【日経ビジネスの記事】
地球儀を半周動かせば、欧州で起きている惨事が、対岸の火事でないことが分かる。ロシア、中国、北朝鮮と対峙する日本は地政学上、「極東のウクライナ」とも呼べる存在だ。
安倍政権時代、日露は27回の首脳会談を重ね、北方領土交渉に臨んだ。今思えば、当時の日本の見通しが、甘かったことが分かる。北方領土は今、ロシアによる軍事拠点化が進む。
北朝鮮は先ごろ、ウクライナ情勢の隙を突くかのように弾道ミサイルを発射した。今年に入って8回目だ。近年、実験を繰り返す兵器は、「極超音速」など、いずれも日本の防衛システムでは迎撃困難なものが目立つ。
ウクライナはもともと世界第3の核保有国だった。冷戦後、核を放棄することで、ロシアなどと和平の覚書を交わした。今回の情勢を見て、北朝鮮は「核保有こそ身を守る最強の手段」と意を強くしたはずだ。
そして中国。ウクライナ侵攻が続く中でも、台湾や尖閣諸島周辺で軍事的威嚇を止める気配はない。台湾有事となれば、沖縄などに米軍基地を置く日本は無関係ではいられない。
◎「極東のウクライナ」は台湾では?
今回の「ウクライナ侵攻」に絡めて気になるのは、やはり「台湾」だ。しかし「極東のウクライナ」は「台湾」ではなく「日本」だと山川編集委員は言う。「極東」で最も「侵攻」の対象になりそうなのが「日本」なら分かる。だが、どう考えても「台湾」だろう。「日本」は韓国よりも下かもしれない。
なぜ「台湾」でなく「日本」が「極東のウクライナ」なのか説明が欲しかった。「ウクライナ侵攻」に絡めて気の利いたことを書こうとして捻り出したのが「日本は極東のウクライナ」という筋立てだろうか。だが、無理がたたって説得力を失う結果になっている。
※今回取り上げた記事「ニュースを突く~日本は極東のウクライナ」
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00108/00169/
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/04/blog-post_20.html
尖閣問題の解説も苦しい日経ビジネス山川龍雄編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/09/blog-post_16.html
「早めに新興国押さえたFIFA」が苦しい日経ビジネス山川龍雄編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/fifa.html
「タクシー券」の例えが上手くない日経ビジネス山川龍雄編集委員https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_15.html
0 件のコメント:
コメントを投稿