「高い効果あり」と一度思ってしまったら後には引けないということか。28日の日本経済新聞朝刊ニュースな科学面に越川智瑛記者が書いた 「4回目接種 拙速に注意?~間隔短いと免疫の回復限定的か」という記事を読んで、そう感じた。
大山ダムの銅像 |
「新型コロナウイルスワクチン」の効果に関しては懐疑的な見方が広がっている。そこは越川記者も分かっているのだろう。「4回目接種」について以下のように記している。
【日経の記事】
イスラエルでは3回目接種から4カ月以上たった60歳以上や医療従事者、持病などでリスクが高い人を対象に、1月から4回目接種を進めている。その結果の一部が研究論文などで報告され始めた。まだ小規模な初期分析とはいえ、3回目接種による免疫を底上げする効果と比べると4回目接種はやや見劣りする。
イスラエルの大規模病院、シェバ・メディカル・センターなどのグループは医療従事者に対する4回目接種の効果や安全性を分析した。ファイザー製の3回目接種から4カ月後に154人がファイザー製、120人がモデルナ製を接種した。減っていた抗体の量は4回目接種で回復するが、3回目接種後のピークをわずかに超える程度だった。変異型「オミクロン型」の感染を阻害する中和抗体の量は従来型やデルタ型に対する中和抗体より大幅に少ない。
3回目接種だけの人と比べた場合、4回目接種が無症状を含む感染を防ぐ効果はファイザー製で30%、モデルナ製で11%にとどまった。発症予防効果はファイザー製で43%、モデルナ製は31%だった。論文では「若くて健康な医療従事者の4回目接種はわずかな効果しかない可能性がある」と考察している。
免疫から逃れやすいオミクロン型の流行によって、3回目接種の意義は大きくなった。2回接種と比べて抗体が増え、免疫細胞の働きも活発になる。感染や発症だけでなく、重症化を防ぐ効果も改善する。その後、重症化予防はほぼ維持されるが、感染や発症の予防は再び徐々に弱まる。しかし、4回目接種は期待ほどの効果が得られない可能性が出てきた。
◎効果が期待しにくいなら…
「免疫から逃れやすいオミクロン型の流行によって、3回目接種の意義は大きくなった」とは思えないが、ここでは置いておく。「若くて健康な医療従事者の4回目接種はわずかな効果しかない可能性がある」という「論文」が出ていて「4回目接種は期待ほどの効果が得られない可能性が出てきた」と越川記者自身も見ているのならば「4回目接種」については対象者を大幅に狭めるなどの対策を考えたいところだ。しかし、話はそうならない。
続きを見ていこう。
【日経の記事】
イスラエルの追加接種には特殊な面もある。2回目接種から3カ月後に3回目、さらに4カ月後に4回目と短い間隔で接種を重ねているからだ。新型コロナワクチンは1、2回目や2、3回目の接種の間隔が長いほうが抗体の質などがよくなることが研究で明らかになってきた。
大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授の宮坂昌之さんは「抗体をつくる免疫細胞が成熟するために一定の時間が必要になる」と指摘する。イスラエルはデルタ型やオミクロン型の流行を抑えるために追加接種を急いだが、間隔が短すぎたせいで効果が不十分になった可能性があるわけだ。
◎漠然とした話が頼り?
「新型コロナワクチンは1、2回目や2、3回目の接種の間隔が長いほうが抗体の質などがよくなることが研究で明らかになってきた」という話に越川記者は頼りたいようだ。
しかし「抗体の質」が「よくなる」と「感染を防ぐ効果」や「発症予防効果」はどうなるのか不明。「接種の間隔」をどの程度にすれば良いのかも触れていない。「接種の間隔」が空くほどワクチンの効果が減衰するのではなかったのか。だとすれば「接種の間隔」は短くしても長くしてもダメという結論になりそうだ。その辺りも越川記者は説明していない。
「イスラエル」で「4回目接種」の効果があまり出なかったのは「接種の間隔」が短かったからだと考えて、やはり日本でも「4回目接種」を推進と訴えたいらしい。
記事は以下のように続く。
【日経の記事】
現行のワクチンは従来型の新型コロナウイルスに対して開発されたものだ。追加接種の効果を高めることを狙い、ファイザーやモデルナはオミクロン型に合わせて開発した特化型ワクチンの臨床試験(治験)に取り組んでいる。モデルナは10日、現行ワクチンとオミクロン特化型を組み合わせた「2価」ワクチンの治験も始めたと発表した。
第三者の査読を受ける前の論文だが、サルやマウスの動物実験の報告では特化型の追加接種の効果は現行ワクチンと大差がなかった。動物実験の結果は人での実際の効果と必ずしも一致しないものの、特化型が最適とは限らない。現行ワクチンの追加接種を4回目、5回目と当面続けることが現実的かもしれない。
◎「4回目、5回目と当面続ける」?
「現行ワクチンの追加接種を4回目、5回目と当面続けることが現実的かもしれない」と越川記者は言う。その理由は「特化型の追加接種の効果は現行ワクチンと大差がなかった」から。「特化型」に期待しないのはいいとしても、なぜ「現行ワクチンの追加接種を4回目、5回目と当面続ける」方向に持っていこうとするのか。
感染者数や死者数の推移を世界的に見ると、ワクチン接種の効果が極めて乏しいと判断するのが妥当だ。ワクチンへの期待も大きく萎んでいる。越川記者がそれに同意しないのならば「ワクチンはこんなに素晴らしい効果を上げている。4回目、5回目も大きな効果が期待できる」と言えるだけの根拠を示してほしい。
むしろ逆のデータが出てきているのに、「接種の間隔」が短かったからかもという弱い根拠に頼って「現行ワクチンの追加接種を4回目、5回目と当面続けることが現実的かもしれない」と書いてしまうのは罪深い。
「ワクチン」が大きな健康被害を人々に与えているのは間違いない。それを上回るメリットがあったと見るべき根拠もない。ならば「追加接種」に関してはデメリットをしっかり伝えるべきだ。乏しい根拠で「4回目、5回目」へと誘導しようとする越川記者の罪は重い。
※今回取り上げた記事 「4回目接種 拙速に注意?~間隔短いと免疫の回復限定的か」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220328&ng=DGKKZO59383040V20C22A3TJN000
※記事の評価はD(問題あり)。越川智瑛記者への評価も暫定でDとする。
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