小石川後楽園(東京都文京区) ※写真と本文は無関係です |
【日経BP社への問い合わせ】
日経ビジネス編集部 山田宏逸様 武田健太郎様 広田望様
12月3日号の特集「『残念な商品』の法則 物はいいのになぜ売れない?」の中の「PART 3 多すぎても少なすぎても不発~やってはいけない『追加機能』」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。
「売れる商品の、機能面から見た最適な形態は『主機能1+追加機能2』--。文具以外でも、この法則に準じて『本質的にはAだが、BもCもできる』という性質を持つヒット商品は少なくない。まずスマホは『携帯電話だが、ネットができて、写真も撮れる』」
「スマホ」には、時計、音楽プレーヤー、歩数計など様々な「機能」があり「主機能1+追加機能2」には当てはまらないのではありませんか。記事には以下の説明も出てきます。
「物はいいはずなのに、なぜか酷評される--。そんな商品の3つ目の特徴は、余計な追加機能を搭載していることだ。NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが18年4月に実施したネット調査(総得票数1万345)では『使っていない機能が多い家電』として『スマートフォン・携帯電話」(得票率32%、以下同)、『電子レンジ』(24%)、『炊飯器』(6%)、『体重計』(6%)、『洗濯機』(5%)、『食器洗い乾燥機』(4%)の6品目がやり玉に挙がった」
ここでは「スマホ」を「余計な追加機能を搭載している」商品の筆頭に挙げています。なのに、この話を忘れてしまったかのように「機能面から見た最適な形態」を具現化した商品として「スマホ」を取り上げています。整合性に問題ありです。
「スマホ」の「機能」が「携帯電話だが、ネットができて、写真も撮れる」だけならば、上記のような調査結果になるでしょうか。「主機能1+追加機能2」に絞った商品として「スマホ」を挙げたのは誤りではありませんか。
せっかくの機会なので、特集の中で他に気になった点を挙げておきます。
(1)「竹田城跡」について
「PROLOGUE~本誌発見の新常識 『和製○○』は大成しない? 観光地、アスリート、政策……」では「『日本のマチュピチュ』として雲海を見下ろす幻想的な風景で話題になった兵庫県の竹田城跡も、昨年度の集客は前年度比3割減(県全体は同3.6%減)」と説明しています。
記事からは「日本のマチュピチュ」と呼ばれたために「竹田城跡」は集客に苦しんでいると取れます。しかし、そう言えるでしょうか。
「竹田城跡」に関しては、2014年頃にブーム化し、その後はブームが去って訪れる人が減少しているようです。そういう状況下で「昨年度の集客」だけを取り出して「宣伝文句」の失敗例のように取り上げるのは適切ですか。
例えば、「日本のマチュピチュ」と打ち出す方針を16年度に決めたら17年度から急に客足が遠のいたといった話であれば、まだ分かります。しかし「日本のマチュピチュ」という言い方はかなり前からあるようです。14年時点では「日本のマチュピチュ」という「宣伝文句」が効果的だったのに、その後はマイナスに働いているのでしょうか。ちょっと考えにくい気がします。今回の記事では、ご都合主義的な分析になっていませんか。
(2)「セブンカフェ」について
「PART 2 スタイリッシュすぎても消費者の不評を買う? やってはいけない『デザイン』」という記事の冒頭では「期待されながら不発に終わる商品は、デザインに問題がある可能性が高い」と打ち出し、最初の事例に「2013年から展開され、累計40億杯を売り上げたセブン-イレブン・ジャパンの『セブンカフェ』」を持ってきています。
記事の流れとしては「セブンカフェ=期待されながら不発に終わる商品」でないと苦しいでしょう。しかし「セブンカフェ」について「1杯100円からの手軽さもあって、カフェや缶飲料など既存のコーヒー市場を侵食する基幹商品に成長した」と説明しています。これは辛い展開です。少なくとも最初の事例は「デザインに問題がある」ために「期待されながら不発に終わる商品」を紹介すべきです。
そうした事例が見当たらない場合、当初想定したストーリーを放棄することも躊躇すべきではありません。想定したストーリーを強引に押し通せば、説得力を失うだけです。
締め切りとの兼ね合いもあるので、難しい面もあるとは思います。しかし、そこはできる限り妥協せずに完成度を高めてください。
【日経BP社の回答】
「日経ビジネス」をご愛読いただき、ありがとうございます。
12月3日号特集「『残念な商品』の法則 物はいいのになぜ売れない?」で取り上げた「スマホ」のケースについて、ご指摘の通り、整合性に欠けると言わざるを得ない表現、構成でした。
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションの調査で利用者が不満を示したスマホの『使っていない機能』とは、おおむね、購入時から組み込まれているアプリのことでした。NTTドコモなど通信キャリアが開発し、初期インストール済みで提供しているアプリを「余分」と思う利用者が多かったわけです。
それに対し、特集班が後段で「最適な形態」と評価した機能は、「電話」「ネット」「カメラ」といった、スマホという商品の本質的な機能についてでした。このため、編集班の中では、“スマホは「主機能1+追加機能2」という理想の商品だが、消費者の中にはメーカーが独りよがりで追加する余分な機能(インストール済みアプリ)を嫌う人もいる”と頭を整理し、主張を展開したつもりでおりました。
しかしながら現実に、「なぜ『機能面に問題がある』と消費者に不満を持たれているスマホを、日経ビジネスが『機能的に最適』と評価しているのか」と理解に苦しむ読者様がおられる以上、構成や表現方法に不十分な部分があったと認識せざるを得ません。
どのような構成が正しかったのか、どのような補足事項があれば、意図が正しく伝わったのか。今後しっかり反省し、次回の編集に役立てて参る所存です。
重ね重ね貴重なご意見を頂き、有難うございました。今後とも「日経ビジネス」をよろしくお願い申し上げます。
◇ ◇ ◇
回答内容に苦しさはあるが、改善に努めようとする姿勢は評価したい。
※今回取り上げた特集「『残念な商品』の法則 物はいいのになぜ売れない?」
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/special/112701135/?ST=pc
※特集全体の評価はD(問題あり)。担当者らの評価は以下の通りとする(敬称略)。
山田宏逸(Dを維持)
武田健太郎(Dを維持)
広田望(暫定C→暫定D)
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