旧門司税関と「レトロハイマート」(北九州市) ※写真と本文は無関係です |
【エコノミストへの問い合わせ】
週刊エコノミスト編集部 種市房子様
8月7日号の「東京都集中の地方法人税 配分巡る国との政治力学」という記事についてお尋ねします。記事には「地方法人特別税は08年度に導入された。もし地方法人税に何の調整もしなければ、大企業の本社や外資企業が集積する東京都や愛知県が地方法人税収を独占してしまう」との記述があります。
これはあり得ないと思えます。まず「東京都や愛知県が地方法人税収を独占してしまう」としても、「地方法人税収」を得る主体が2つあるのであれば「独占」ではなく「寡占」です。また、「東京都や愛知県」が「独占」するのであれば、見出しは「東京都集中」ではなく「東京・愛知に集中」などとすべきです。
では「東京都や愛知県」を一体としてみれば「独占」は成立するでしょうか。これも考えられません。他の道府県に本社を置く企業は当然にあります。大企業数で見ると大阪府は愛知県を上回っているようです。なのに「地方法人税収」を「東京都や愛知県」が「独占」してしまうはずがありません。また、大企業が少ない県でも「地方法人税収」がゼロにはなりにくいでしょう。
「もし地方法人税に何の調整もしなければ、大企業の本社や外資企業が集積する東京都や愛知県が地方法人税収を独占してしまう」との説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
さらに、もう1つ質問があります。それは以下のくだりについてです。
「東京都にとっては、地方法人特別税が続行、あるいは別の形で召し上げとなると、影響額は地方消費税見直しの比ではない。小池知事は、昨年の衆院選時の『排除発言』で政治力・発信力が大きく低下している。小池知事が6月の有識者会議初会合後、『知事の間では46対1。東京都のお金を当てにしている地域も多いのでは』と発言しているように、他県からの援軍は頼めそうもない」
種市様は記事の中で「もし地方法人税に何の調整もしなければ、大企業の本社や外資企業が集積する東京都や愛知県が地方法人税収を独占してしまう」と説明していました。だとしたら「愛知県」も税収を「召し上げ」られている側のはずです。なのになぜ「他県からの援軍は頼めそうもない」となってしまうのですか。
ちなみに日経は7月27日付の「全国知事会議、地方法人課税巡り舌戦 札幌で開催」という記事で以下のように報じています。
「全国知事会は26日、札幌市内で全国知事会議を開き、税源の大都市偏在が指摘される地方法人課税を巡り『地方対東京』で舌戦を繰り広げた。地方税財政常任委員長の石井隆一・富山県知事は『新たな偏在是正措置が必要という見方が圧倒的』と主張。小池百合子・東京都知事は『パイの奪い合いは日本の国力を縮小させる』と反論した。石井知事は地方税財政常任委員会の構成都府県23団体のアンケート結果を紹介した。新たな是正措置を『必要』としたのは20団体、『必要ない』は2団体だった」
「『必要ない』は2団体だった」のですから、東京都と同じ立場の道府県が1つはあるはずです。この自治体からの「援軍」は期待できるのではありませんか。
問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。読者から購読料を得ているメディアとして、責任ある行動を心掛けてください。
◇ ◇ ◇
結局、回答はなかった。編集部全体の方針に従っているのだとは思うが、だとしても残念だ。
※今回取り上げた記事「東京都集中の地方法人税 配分巡る国との政治力学」
https://mainichi.jp/economistdb/index.html?recno=Z20180807se1000000045000
※記事の評価はD(問題あり)。種市房子記者への評価はB(優れている)を据え置くが、弱含みではある。種市記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。「事前報道に懐疑的な週刊エコノミスト種市房子記者に期待」では、種市記者へ大きな期待を寄せるようになった理由を説明している。
事前報道に懐疑的な週刊エコノミスト種市房子記者に期待
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/04/blog-post_12.html
これで「バブル」? 週刊エコノミスト「電池バブルがキター」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/02/blog-post_7.html
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