流川桜並木(福岡県うきは市) ※写真と本文は無関係です |
記事の冒頭で「日本銀行によるマイナス金利政策の影響で、貯蓄性が著しく悪化している保険商品。だが、お宝はそこかしこに埋まっている。保険のプロの目で、そのお宝を発掘してもらった」と取材班は記している。この記事を読んで鬼塚氏の選んだ保険が「お宝」に見えたのなら、今回の特集を担当する資格はない。
鬼塚氏の選んだ3つの商品はいずれも「お宝」とは言い難い。特に問題ありと思えた「明治安田生命 米ドル建・一時払い養老保険~かんたん・シンプルで魅力的な満期受取率を実現」に絞って見ていこう。
【ダイヤモンドの記事】
相対的に利回りが高い外貨建て保険に関心はあるけれど、知識も経験もないという初心者にも「かんたん・シンプル」で分かりやすいのが、この保険だ。
一時払保険料は円で支払い、明治安田生命保険が受領した日の所定の為替レートで米ドルに換算した金額が、基本保険金額となる。
保険期間中の死亡保険金額・解約返戻金額を抑える(基本保険金額を上限とする)ことで、10年後に魅力的な満期保険金(米ドル建て)を受け取れる。
満期保険金額等は加入時の年齢・性別・予定利率によって契約日に確定する。予定利率は毎月1日に設定されるが、満期まで見直しがないため、金利リスクがなく初心者にも分かりやすい。一時払保険料は100万円から10万円単位で最高1億円まで。
2018年4月の予定利率は2.95%。仮に50歳男性が100万円を預け、1ドル=110円と仮定した場合、基本保険金額は9091ドルとなり、満期保険金額は1万1463.75ドル、満期受取率は126.1%となる。
◇ ◇ ◇
問題点を挙げていく。
(1)「お宝」の根拠は?
鬼塚氏が紹介した3つの商品に共通するのが、どういう基準で「お宝」と言っているのか分からないことだ。「お宝」と言える条件は2つ考えられる。(1)保険会社にとって採算の良くない商品(2)他社と比べて有利な設計になっている商品--。例えば「この保険料でこの保障ならば保険会社は間違いなく赤字」などと書いてあれば「お宝かも」と少しは思う。しかし、そうした説明は見当たらない。
「明治安田生命 米ドル建・一時払い養老保険」に関しては「かんたん・シンプルで魅力的な満期受取率を実現」しているから「お宝」と言いたいのだろう。だが、「満期受取率は126.1%となる」と書いているだけで、なぜ「126.1%」が「魅力的」と言えるのか根拠を示していない。
「かんたん・シンプル」も、それだけでは「お宝」と呼ぶに値しない。しかも、仕組みを見ると、それほど「かんたん・シンプル」ではない。為替リスクを取ってでも高い利回りを得たいのならば、米国債などを買った方が「かんたん・シンプル」だ。
(2)「満期受取率126.1%」は魅力的?
10年物の米国債の利回りは2.9%程度なので、「明治安田生命 米ドル建・一時払い養老保険」が10年後に満期を迎えた時に「126.1%」になっていたとしても、米国債の利回りに及ばない。ならば米国債を扱う日本の証券会社で米国債を買った方が有利だ。
下村脩博士之像(長崎県諫早市)※写真と本文は無関係です |
記事に示した「ご契約例」に沿って考えてみよう。一時払い保険金500万円をドルに換えた4万5455ドルが「基本保険金額」であり「死亡保険金」となる。「解約返戻金」は「死亡保険金額」が上限となっているため、ドルベースで考えると満期前の解約ではプラスのリターンは期待できない。
米国債そのものを買う場合、こうしたマイナス面はない。しかも、この保険は利回りの面でも米国債に比べた優位性がない。なのに、わざわざこの保険を選ぶ理由があるだろうか。
「生命保険の役割もあるから」と鬼塚氏は反論するかもしれない。だが、死亡保険金は基本保険金額と同じだ。これでは保険としての役割は期待できない。災害死亡保険金は5万7318ドルとなるが、高が知れている。
百歩譲って「保険としての役割が期待できる」としても、「お宝」と考えるべき要素は見当たらない。鬼塚氏は、これまで書いてきたようなことは十分に理解しているはずだ。価値の乏しい保険を「お宝」に見せるのが、鬼塚氏の「プロ」としての腕の見せ所なのだと思う。
週刊ダイヤモンドの保険特集の担当者には「お宝」だと分かってもらえたようなので、鬼塚氏は「プロ」と呼ぶべき力量があるのだろう。だが、それは保険の契約を検討している人が信頼すべき「プロ」ではない。
※今回取り上げた記事「知っている人だけが得をする プロならではのお得商品」
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/23343
※記事の評価はD(問題あり)。鬼塚眞子氏への評価もDとする。鬼塚氏を筆者に選んだ担当者ら(中村正毅記者、藤田章夫副編集長、宮原啓彰記者、田上貴大記者)には猛省を促したい。
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