ミニ眼鏡橋(長崎県諫早市) ※写真と本文は無関係です |
当該部分は以下のようになっている。
【日経の記事】
旧ソ連の人口1780万人の国、カザフスタン。2月、ラテン文字をもとに新たに開発した32文字を母国語に採用した。ロシア語と同じキリル文字を捨て去る。考案に携わったシャヤフメトフ言語開発研究所のトレショフ所長は「カザフ語を生き残らせながら世界とコミュニケーションしやすくする」と語る。
カザフ語の文字は歴史に翻弄されてきた。19世紀以降、アラビア文字やラテン文字を経て、旧ソ連編入後の1940年からキリル文字になった。カザフは91年に独立国家となったが、街中にはいまだロシアを象徴するキリル文字の看板があふれ人口の2~3割はカザフ語を理解しない。
新しい文字の導入で帝政復活を夢見るロシアの影響力を遮断し42もあるキリル文字では「スマートフォンでの入力が煩雑」(ナザルバエフ大学のオラザリエワ准教授)との不便を解消。デジタルの波に乗せてカザフ語を再生させる。
パクス・ブリタニカ、パクス・アメリカーナを経て、20世紀に最大の国際共通語になった英語。だが人工知能(AI)を駆使して進化する自動翻訳機能によって「英語は絶頂期を過ぎた」との論も台頭。消えゆく運命とされてきた少数言語にはデジタルの世紀で逆襲の機会が生まれている。
◎カザフ語は「少数言語」?
まず、カザフ語は「少数言語」なのかとの疑問が浮かぶ。「人口1780万人の国」で母国語にもなっている。「人口の2~3割はカザフ語を理解しない」ということは、裏返せば7~8割がカザフ語を理解できる。
「ヨーロッパ地方言語・少数言語憲章によると地方言語・少数言語とはその国の人口の残りよりも人口が少ないグループによってその国の特定の場所で伝統的に用いられており、
その国の公用語と異なるもの」(ウィキペディア)だという。これに従えば、カザフ語は「少数言語」には当たらない。
「キリル文字を捨て」て「ラテン文字をもとに新たに開発した32文字を母国語に採用した」ことで「カザフ語を再生」できるという考え方も謎だ。「カザフ語」は瀕死の状況にあったわけではないのに「再生」なのか。元々のカザフ語の文字を復活させたのならば「再生」とするのも分かるが、「アラビア文字やラテン文字を経て」「キリル文字になった」のであれば、どれが本来の文字とは言いにくい。「新たに開発した」部分はあるにせよ「ラテン文字」の時代に戻っただけの話ではないか。
どこが「逆襲」なのかも謎だ。元々はロシア語の話者の方が多かったのに「キリル文字を捨て」たことで逆転しつつあるといった話があれば「逆襲」かもしれない。しかし、そうした記述は見当たらない。
この後、記事に「少数言語」の話は出てこない。結局、記事には「少数言語の逆襲」に当たる事例が出てこない。
ついでに修飾・被修飾の関係について1つ指摘しておきたい。
「新しい文字の導入で帝政復活を夢見るロシアの影響力を遮断」と書くと、ロシアが「新しい文字の導入で帝政復活を夢見」ているように見えてしまう。「帝政復活を夢見るロシアの影響力を新しい文字の導入で遮断」とすれば問題は解消する。
※今回取り上げた記事「パンゲアの扉~つながる世界 覆る常識(3)少数言語の逆襲 画一より 多様性に磁力」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180425&ng=DGKKZO29809490V20C18A4MM8000
※記事の評価はD(問題あり)。今回の連載に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「小が大を制す」が見当たらない日経1面「パンゲアの扉」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/04/1_24.html
※「パンゲアの扉~つながる世界」の以前の連載については以下の投稿も参照してほしい。
冒頭から不安を感じた日経 正月1面企画「パンゲアの扉」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_2.html
アルガンオイルも1次産品では? 日経「パンゲアの扉」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_4.html
スリランカは東南アジア? 日経「パンゲアの扉」の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_28.html
根拠なしに結論を導く日経「パンゲアの扉」のキーワード解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_8.html
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