甘木公園の桜(福岡県朝倉市) ※写真と本文は無関係です |
まずは桃井記者の解説から見ていこう。
【日経の記事】
米ロ関係が最悪だ。トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領は核軍拡を競い合い、ロシアの政策提言機関「ヴァイダル・クラブ」も3月「いかに新冷戦に勝利するか」との論文で封じ込めへの対抗を訴えた。
◇ ◇ ◇
一方で、3月22日の日経の記事では以下のように記している。
【日経の記事(3月22日)】
【ワシントン=永沢毅】トランプ米大統領は20日、ロシアのプーチン大統領と電話協議した。トランプ氏は「そう遠くない将来」の米ロ首脳会談の開催に前向きな意向を示した。北朝鮮やウクライナ、シリア問題について話し合いたいと表明。プーチン氏の大統領再選に祝意を伝えた。
トランプ氏がホワイトハウスで記者団に明らかにした。米ロ両国の軍拡競争についても議論する考えを示した。トランプ政権はロシアの脅威に備えて新型核兵器の開発を進める方針を表明。ロシアも今月、これに対抗する形で新たな大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発成功を主張した。
◎本当に「最悪」ならば…
桃井記者の「トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領は核軍拡を競い合い」という説明は誤りではないのだろう。だからと言って「米ロ関係が最悪」とも考えにくい。「トランプ米大統領」は「プーチン氏の大統領再選に祝意を伝えた」上に「米ロ首脳会談の開催に前向きな意向を示した」という。なのに「米ロ関係が最悪」なのか。戦争の一歩手前ぐらいの緊迫感があれば「米ロ関係が最悪」と言われて納得できるのだが…。
記事の問題点を追加で指摘しておきたい。
【日経の記事】
日本にとって新冷戦がかつての冷戦と異なるのは東アジアの地政学的意義が劇的に変わったことだ。一つは北朝鮮の影響だ。米国や日本は対北朝鮮の防衛力を増強し、結果として米ロが欧州だけではなく東アジアでも向き合う形となった。二つめの変化として覇権を唱える中国が加わった。
◎「かつての冷戦」は欧州限定?
桃井記者によると「新冷戦」では「結果として米ロが欧州だけではなく東アジアでも向き合う形となった」らしい。これが「かつての冷戦と異なる」と言うが、昔も今も「東アジアでも向き合う形」だと思える。かつての冷戦時代には、在韓米軍や在日米軍は存在していなかったのか。それとも、ソ連は極東に軍事力をほとんど割いていなかったのか。
浅井の一本桜(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です |
記事の結論部分にもツッコミを入れたい。
【日経の記事】
最近、プーチン氏は公の場で帝政ロシアの皇帝アレクサンドル3世を称賛するようになった。19世紀に英国とグレート・ゲームを展開した皇帝で、こんな警句で知られる。「我々には友人も同盟国も必要ない。ロシアには同盟者は2人しかいない。陸軍と海軍だ」
敵を知り、己を知る。古今東西の兵法の基本をおろそかにできない時代に入った。
◎「基本をおろそかにできる時代」ってある?
「敵を知り、己を知る」ことは大事だ。それはいつの時代も変わらない。ところが桃井記者は「古今東西の兵法の基本をおろそかにできない時代に入った」と結論付けている。つまり、少し前までは「兵法の基本をおろそかに」しても問題ない時代だったのだろう。そんな時代が本当にあったのか。
付け加えると、注釈なく横文字を使っているのも引っかかる。上記のくだりで言えば「グレート・ゲーム」だ。
別のところで「有識者などセカンドトラックの議論で関係を深めていくなど様々なオプションを手にしておくのが戦略的なやり方だ」というコメントを使っているのも気になった。「セカンドトラック」「オプション」という横文字を使う必要性は乏しい。コメントの主がそう言ったとしても、省いたり別の言葉に置き換えたりといった工夫が欲しい。
※今回取り上げた記事「風見鶏『新冷戦』時代の対ロ戦略」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180401&ng=DGKKZO28798060Q8A330C1EA3000
※記事の評価はD(問題あり)。桃井裕理記者への評価も暫定でDとする。
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