身延桜(妙法寺のしだれ桜、福岡県うきは市) ※写真と本文は無関係です |
【日経への問い合わせ】
26日朝刊1面の「パンゲアの扉~つながる世界 覆る常識(4)民族・宗教を超えて 門戸を開き 最先端走る」という記事についてお尋ねします。記事には「19世紀、現在の国民国家の原型が作られたが、一方で国家の枠にとらわれることなく新天地を求め海外に移住したのが華僑・印僑だ」との記述があります。これを信じれば「華僑」の移住は19世紀に始まるはずです。しかし、一般的な歴史認識とは異なります。
例えば、ブリタニカ国際大百科事典では「華僑の起源は中国人の海外進出の歴史とともに、古くは漢代にまでさかのぼる。宋・元代の海外貿易の発展により、南洋方面に移住する中国人が現れて唐人と呼ばれた。明・清代には海禁政策がとられて中国人の海外出航は厳禁されたが、沿海地住民の生活難や貿易の利潤を求めての密航者があとを絶たず、帰国すれば法禁に触れるのでそのまま現地にとどまるか、あるいは海寇として活動の拠点を現地におく者が多くなった。明末清初の動乱はこれに拍車をかけた」と解説しています。
「咸豊 10 (1860) 年に中国開国に伴って正式に中国人の海外渡航が認められてから、自由移民の進出が一層著しくなった」(ブリタニカ国際大百科事典)面はあるとしても、19世紀の海外移住から華僑が始まったとは言えません。
日本大百科全書(ニッポニカ)でも「中国人の集団的、そして真正の意味における海外移住は明末をもって始まる。とくに倭寇対策で勘合貿易を民間にも開放した明の穆宗(ぼくそう)(在位1567~72)以降、中国人の南洋との交易は一段と盛んになり、生活のための移住と定着、すなわち華僑社会の形成が徐々に始まる」と記しています。
「19世紀、新天地を求め海外に移住したのが華僑」との記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。「19世紀」は「現在の国民国家の原型が作られた」時期を述べているだけとの可能性も考慮しましたが、文の構成から考えると無理があると思えます。
御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。クオリティージャーナリズムを標榜する新聞社として掲げた旗に恥じぬ行動を心掛けてください。
◇ ◇ ◇
「19世紀になるまで華僑が全くいなかったとは書いていない」といった弁明はできそうな気がする。ただ、普通に読めば「19世紀に華僑が生まれた」と理解するはずだ。控え目に言っても、読者の誤解を招く書き方だ。
※今回取り上げた記事「パンゲアの扉~つながる世界 覆る常識(4)民族・宗教を超えて 門戸を開き 最先端走る」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180426&ng=DGKKZO29831310V20C18A4MM8000
※記事の評価はD(問題あり)。今回の連載に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「小が大を制す」が見当たらない日経1面「パンゲアの扉」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/04/1_24.html
今度は「少数言語の逆襲」が苦しい日経「パンゲアの扉」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/04/1_24.html
「覆る常識」を強引に描き出す日経1面「パンゲアの扉」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/04/blog-post_95.html
※「パンゲアの扉~つながる世界」の以前の連載については以下の投稿も参照してほしい。
冒頭から不安を感じた日経 正月1面企画「パンゲアの扉」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_2.html
アルガンオイルも1次産品では? 日経「パンゲアの扉」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_4.html
スリランカは東南アジア? 日経「パンゲアの扉」の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_28.html
根拠なしに結論を導く日経「パンゲアの扉」のキーワード解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_8.html
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