2017年8月24日木曜日

「不祥事頻発」の分析が怪しい週刊ダイヤモンドの自衛隊特集

週刊ダイヤモンド8月26日号の特集「自衛隊 防衛ビジネス 本当の実力」は、全体として悪い出来ではない。ただ「Part 2~スキャンダル組織 自衛隊&防衛省の秘密」の最初の記事に関しては、内容を素直に信じる気になれなかった。
九州北部豪雨で橋が流されたJR久大本線(大分県日田市)
           ※写真と本文は無関係です

まず「スキャンダル組織」という前提が怪しい。「自衛隊・防衛省では、なぜ不祥事が繰り返されるのか」と問題提起しているが、個人的には「自衛隊&防衛省」に不祥事が多いとは感じていない。特集でも「日報問題」ぐらいしか触れていない。

20万人以上の組織だから、「不祥事」は数多くあるだろう。だが、「スキャンダル組織」とまで言うのならば、具体的な根拠を示してほしかった。せめて、最近の不祥事一覧ぐらいは載せてほしい。

不祥事を繰り返す理由について取材班は「異なる背景を持った『防衛七族』が常に権力闘争を繰り広げているからだ」と断定する。これも説得力に欠ける。記事の一部を見てみよう。

【ダイヤモンドの記事】

防衛七族──。防衛省・自衛隊は、(1)政治任用ポスト(大臣など)、「背広組」の(2)事務官・(3)技官・(4)教官、「制服組」の(5)陸・(6)海・(7)空の自衛官とそれぞれ異なる「族」で構成される。これだけ異なる背景を持った者同士が同じ組織にいればもめ事が起こらないわけがない


◎もめ事が起きると「不祥事」を繰り返す?

異なる背景を持った者同士が同じ組織にいれば」必ず「もめ事」が起きやすくなるとは思わないが、取りあえず受け入れてみよう。だが、「もめ事」は起きても問題ない。むしろ起きた方がいいとも言える。多様な考え方が存在し、異なる意見がぶつかり合うのは望ましいことだ。それを「不祥事」と単純に結び付けるのは短絡的ではないか。
九州北部豪雨後の朝倉光陽高校(福岡県朝倉市)
       ※写真と本文は無関係です

それに、自衛官が暴行容疑で逮捕されるといった類の「不祥事」に「防衛七族」の「権力闘争」は関係あるのか。記事で言う「スキャンダル」「不祥事」に暴行事件などは入らないのかもしれないが、だとすると何を以って「スキャンダル」「不祥事」と言うのか疑問が残る。

そもそも本当に取材班が言うような「権力闘争」が繰り広げられているのだろうか。記事の最後では以下のように書いている。

【ダイヤモンドの記事】

防衛省・自衛隊では、本省と統陸海空の4幕僚監部、防衛装備庁も含めた覇権争いが、日々繰り広げられている



◎防衛装備庁も覇権を目指す?

記事の説明を信じれば、「防衛装備庁」も「防衛省・自衛隊」の覇権を握ろうと権力闘争を続けているのだろう。「違う」と言える根拠を持っているわけではないが、「本当なのかなぁ」とは思う。例えば「防衛七族」の1つである「教官」が覇権を握って「政治任用ポスト(大臣など)」や陸海空の自衛隊を支配するといった事態も十分にあり得るのだろうか。そもそも、今は「防衛七族」と「統陸海空の4幕僚監部、防衛装備庁」の中で、どこが覇権を手にしているのか。色々と疑問が浮かぶ。

結局、「この記事はあまり信用しない方がいい」と結論付けるのが妥当だろう。


※今回取り上げた特集「自衛隊 防衛ビジネス 本当の実力
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/21047

※特集全体の評価はC(平均的)。担当者らの評価は以下の通りとする。

浅島亮子副編集長(暫定D→暫定C)
新井美江子記者(D→C)
千本木啓文記者(暫定D→暫定C)
秋山謙一郎記者(暫定C)
大西一史記者(暫定C)

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