2017年8月22日火曜日

日経1面「イノベーションとルール」の不安な出だし

日本経済新聞朝刊1面で「イノベーションとルール」という連載が始まった。22日の第1回「新技術は草刈り場 法と現実の乖離『商機』」の中身はかなり苦しい。材料が乏しいのに強引に連載に踏み切ったのではないかとの疑念が浮かぶ。
新鳥栖駅(佐賀県鳥栖市) ※写真と本文は無関係です

最初の事例からも、ある種のごまかしが見え隠れする。

【日経の記事】

「当社の新たな象徴になる」。7月、独自動車大手アウディのルペルト・シュタートラー社長は胸を張った。新型車「A8」は世界初の高度な自動運転機能を搭載。時速60キロメートル以下などの条件で人工知能(AI)を含むシステムが運転を担う。

日本でも先行車の自動追従や衝突回避の自動ブレーキなどは実用化済みだが、運転責任はあくまで人だドイツは5月に道路交通法を改正。「運転者が遅滞なく運転を引き受けられる場合」はシステムによる走行を可能にした。ドイツ車は実用技術を蓄積できる。


◎ドイツは運転者に責任なし?

日本について「運転責任はあくまで人だ」と書いた後に「ドイツは5月に道路交通法を改正」と出てくると「ドイツでは自動運転車に関して人が運転責任を問われないように法改正したのか」と思ってしまう。しかし、その後には「『運転者が遅滞なく運転を引き受けられる場合』はシステムによる走行を可能にした」と述べているだけだ。これだと「遅滞なく運転を引き受け」るべき「運転者」が「運転責任」を負っていると思える。

ドイツでも「運転責任はあくまで人だ」とすると、日独で大きな違いはなくなる。記事によれば日本でも「先行車の自動追従」は「実用化済み」らしい。だとすると5月に「システムによる走行を可能にした」ドイツは言うほど先進的ではない。

初回の記事で最初に出てくる事例がこれほど苦しいと、連載の第2回以降が心配になってくる。テーマ自体これまで何度も紙面で取り上げてきたものなので、事例と切り口の両方で苦労しそうだ。


※今回取り上げた記事「イノベーションとルール(1)新技術は草刈り場 法と現実の乖離『商機』
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170822&ng=DGKKZO20224710S7A820C1MM8000

※記事の評価はD(問題あり)。

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