豪雨被害を受けた福岡県朝倉市内の店舗 ※写真と本文は無関係 |
【日経の記事】
ひるがえって、日本はどうか。政治家の資質を疑うような失言や不祥事が相次いでいる。2012年末に第2次安倍内閣が発足して以来、問題発言などで辞任した閣僚はすでに6人を数える。
なにがいけないのか。自民党のベテラン議員らに聞くと、いちばん多いのが、1996年に初めて実施された衆院の小選挙区制度で政治家の質が下がったという指摘だ。要約すると、こうなる。
同じ選挙区から複数が当選する中選挙区制と違い、小選挙区制は勝ちか負けしかない。このため、賛否が分かれる独自の政策ではなく、誰にでも聞こえがいい抽象的な公約を掲げがちになる――。
衆院では平均すると2年半に1回ほど選挙がある。そんな守りの選挙を重ねるうちに、国会議員は個性を失い、金太郎アメのようになってしまう、というわけだ。
◎「金太郎アメ」だから「失言や不祥事」?
「小選挙区制」の下では「守りの選挙を重ねるうちに、国会議員は個性を失い、金太郎アメのようになってしまう」とも思えないが、取りあえず受け入れてみよう。だとしたら、個性は乏しくても「守り」だけはしっかりした政治家ばかりになりそうなものだ。しかし「2012年末に第2次安倍内閣が発足して以来、問題発言などで辞任した閣僚はすでに6人を数える」という。辻褄が合っていない。
九州北部豪雨後のJR日田彦山線の陸橋(福岡県東峰村) ※写真と本文は無関係です |
「問題発言などで辞任した閣僚」は「金太郎アメ」というより、悪い意味で個性が強いのではないか。「政治家の資質を疑うような失言や不祥事」があれば「守りの選挙」を勝ち抜きにくいはずだ。
ついでに言うと「同じ選挙区から複数が当選する中選挙区制と違い、小選挙区制は勝ちか負けしかない」という説明も引っかかった。「当選=勝ち」「落選=負け」だとすれば、「中選挙区制」でも「勝ちか負けしかない」。それに、現行制度では「比例復活当選」という微妙な「勝ち」もある。
ともかく「政治家の質が下がったのは小選挙区制度に原因あり」というのが秋田氏の見立てだったはずだ。なのに記事では「日本では資質を欠いた政治家は選挙で淘汰される」とも書いている。「小選挙区制度の下で守りの選挙を続けるから資質を欠いた政治家が出てきてしまう」という分析はどうなったのか。自分で書いたことを忘れてしまったのか。
結論部分も説得力に欠ける。
【日経の記事】
では、日本が優れた指導者を生み出していくには、どうすればよいのか。自身も元官僚である作家の堺屋太一氏は語る。
「戦後、吉田や佐藤のような官僚OBが首相を担い、官僚を抑えて戦後政治を引っ張った。その後、田中や竹下のような派閥領袖に引き継がれたが、底流では官僚が政策を主導し、首相がそれに乗っかる政治が続いてきた。まず、この状態から脱却しなければ、新しいリーダーは生まれてこない」
堺屋氏は明治にしろ、戦後にせよ、日本は「変革期には政治主導で伸び、安定すると官僚主導で停滞してきた」とみる。今日の政治の混迷が、新たな変革への過渡期の苦しみだとすれば、むなしさも少しは和らぐ。
◎「金太郎アメ」問題はどうなった?
「小選挙区制」の下では「守りの選挙を重ねるうちに、国会議員は個性を失い、金太郎アメのようになってしまう」という話はどこに行ってしまったのか。「政治家の質が下がった」原因がそこにあるのならば、「日本が優れた指導者を生み出していくには、どうすればよいのか」という問いへの答えは明らかだ。「小選挙区制度の廃止」しかない。なのに結論部分で全く触れていない。書き進めるうちに本当に忘れてしまったのだろう。
※今回取り上げた記事「Deep Insight~指導者を生み続ける力」
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170811&ng=DGKKZO19888950Q7A810C1TCR000
※記事の評価はD(問題あり)。秋田浩之氏への評価もDを維持する。秋田氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。
日経 秋田浩之編集委員 「違憲ではない」の苦しい説明
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_20.html
「トランプ氏に物申せるのは安倍氏だけ」? 日経 秋田浩之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/02/blog-post_77.html
「国粋の枢軸」に問題多し 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/deep-insight.html
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