2017年7月7日金曜日

「大学序列崩し」が見えない週刊ダイヤモンド西田浩史記者の記事

大げさと言うか中身がないと言うか…。週刊ダイヤモンド7月8日号に載った「中堅・下位校の志願者急増! 大学序列崩し“サバイバル”」という記事は問題が多かった。記事を順に見ていきながら、気になった点を指摘してみる。
夜明駅(大分県日田市)※写真と本文は無関係です

【ダイヤモンドの記事】

「日東駒専」「産近甲龍」といわれる、中堅大学の“くくり”が崩壊しつつある──。そう教育関係者が明かすのは“成り上がり”候補大学が猛追しているからだ。


◎「日東駒専」はどうなった?

最初の段落で上記のように書いてあったら、「日東駒専」「産近甲龍」という「“くくり”」が崩壊しつつある状況を説明してくれると期待してしまう。しかし、最後まで読んでもそんな話は出てこない。

まず「日東駒専」については第2段落以降に全く出てこない。九州と関西の動向に終始している。これは読者に対する騙しと言えるレベルだ。では、「日東駒専」以外の括りは崩壊しつつあるのかと言えば、これも苦しい。記事の続きを見ていこう。

【ダイヤモンドの記事】

きっかけは4月、大学通信から発表された「一般入試の志願者数の増加ランキング」だ。無名の全国12の大学が、5年以上連続で志願者数を増加させ、関係者の間に衝撃が走った

その一つが、九州の福岡市にある福岡工業大学。11年連続で志願者数が増加。ホームページには、国公立大学との併願を促すような内容が記載され、明らかに、優秀層獲得を狙っている。福岡市の大手塾によれば、「10年前までは、九州の最難関私立の『西福APU』との併願は考えられなかったが、今はこれらとの併願者も多く、難易度もすぐ下まで上昇した」という。情報開示に積極的で、「教育の中身の可視化」が評価されているのだ。


◎何が「衝撃」?

無名の全国12の大学が、5年以上連続で志願者数を増加させ」たことが「関係者の間に衝撃」を走らせたというが、これは奇妙だ。志願者数はこれまでも公表されている。記事で言う「12の大学」が前年まで「4年以上連続で志願者数を増加させ」ていたのも、少し調べれば分かるはずだ。一般の人ならばともかく、大学の「関係者」に「衝撃」が走るとは考えにくい。
中村学園大学(福岡市城南区)※写真と本文は無関係です

例えば「福岡工業大学」は「11年連続で志願者数が増加」したらしい。ならば、前年に10年連続の増加は達成していたはずだ。なのに「11年」になると関係者に「衝撃」が走るのか。

ついでに言うと、国内の大学を「無名」と表現するのは感心しない。多くの学生が通っていて、地元では大学名を知っている人がたくさんいるはずだ。「全国的な知名度は低い」ぐらいの表現が適切ではないか。


◎「西福APU」との併願も多い?

『西福APU』との併願は考えられなかったが、今はこれらとの併願者も多く、難易度もすぐ下まで上昇した」との「福岡市の大手塾」のコメントも疑問が残る。福岡大学との併願はともかく、西南学院大学、立命館アジア太平洋大学との併願はあってもわずかではないか。そう考えるのは学部の重なりがほぼないからだ。学部構成は以下のようになっている。

福岡工業大学=工・情報工・社会環境

西南学院大学=神・文・商・経済・法・人間科学・国際文化

立命館アジア太平洋大学=アジア太平洋・国際経営


福岡工業大学の社会環境は文系学部のようなので西南学院大学や立命館アジア太平洋大学との併願がないとは言わないが、常識的には併願対象になりにくそうだ。

さらに言えば、「難易度もすぐ下まで上昇した」とは考えにくい。福岡工業大学の理系学部を福岡大学の理学部や工学部と比べると偏差値で5程度は下回っている。「すぐ下」というならば、1~2ぐらいの差であってほしい。そうなってくると「中堅大学の“くくり”が崩壊しつつある」という記事の見立てもかなり苦しくなってくる。

そもそも「西福APU」に関しては「九州の最難関私立」と表現しているのだから、この序列が崩壊しても「中堅大学の“くくり”が崩壊しつつある」という話にはならない気がする。

これは関西に関する記述についても言える。

【ダイヤモンドの記事】

一方、大阪にある追手門学院大学は特に入試がユニークだ。2013年度から取り組んできた入試や学部の改革が功を奏しつつある。

同大学は心理学部など文系学部のみの中規模大学。関西の中堅大学群「産近甲龍」に次ぐ、「摂神追桃」の一角だ。「関西では一度イメージが付くと、大学の序列を覆すのは難しい」(大阪市の学習塾)状況。その中で急速にイメージ、難易度が「産近甲龍」に接近し、“奇跡の上昇、序列崩し”とまで関係者に言われているのだ


◎「産近甲龍+追」と呼ばれる日も近い?

急速にイメージ、難易度が『産近甲龍』に接近し、“奇跡の上昇、序列崩し”とまで関係者に言われているのだ」と筆者の西田浩史記者は書いている。そして記事に付けたグラフには「『産近甲龍+追』と呼ばれる日も近い」とのタイトルも付けている。仮にそうだとしても「序列崩し」は大げさだ。

久留米工業大学(福岡県久留米市)
     ※写真と本文は無関係です

例えば「業界大手4社」と呼ばれていたのが、5番手企業が力を付けて「大手5社」と言われるようになった時に「業界の序列が崩れた」と感じるだろうか。順位に変化がないのならば、「序列が崩れた」とは思わないのが普通だ。

“奇跡の上昇、序列崩し”とまで関係者に言われている」と西田記者は訴えるが、実際にどの程度の「上昇」なのかは教えてくれない。さらに言えば、記事中で「序列崩し」を語ってくれるのは匿名の人ばかりだ。

例えば「中堅大学の“くくり”が崩壊しつつある──。そう教育関係者が明かす」というくだりでも実名は出てこない。「10年前までは、九州の最難関私立の『西福APU』との併願は考えられなかったが、今はこれらとの併願者も多く、難易度もすぐ下まで上昇した」と語るのは「福岡市の大手塾」でやはり匿名だ。

これだけ匿名が多い上に、難易度上昇を示す具体的な数字も記事中には出てこないことを考慮すると、この記事の内容を信じるのは控えた方が良さそうだ。


※今回取り上げた記事「中堅・下位校の志願者急増! 大学序列崩し“サバイバル”」http://diamond.jp/articles/-/134138


※記事の評価はD(問題あり)。西田浩史記者への評価はDで確定とする。今回の記事に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「日東駒専」「産近甲龍」問題でダイヤモンド社から久々の回答
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_6.html

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