2017年7月29日土曜日

「脱時間給」擁護の主張が苦しい日経 水野裕司編集委員

28日の日本経済新聞朝刊1面で水野裕司編集委員が「脱時間給」の導入を訴える解説記事を書いている。この件では、いつも同じような指摘になってしまうのだが、日経が相変わらずおかしな主張を展開するので仕方がない。まず「誰のための連合か」という記事の一部を見ていこう。
豪雨被害を受けた大分県日田市 ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

連合の新制度への反対姿勢に透けるのは、年功制や長期雇用慣行のもとでの旧来の働き方を守り抜こうとしていることだ。だが日本が成長力を伸ばすには、もっと生産性を上げられる働き方を取り入れることは欠かせない。

グローバル化が進み、企業の競争が一段と激しくなるなか、働く人の生産性向上を促す脱時間給はできるだけ早く導入しなければならない制度である。単純に時間に比例して賃金を払うよりも、成果や実績に応じた処遇制度が強い企業をつくることは明らかだ。企業の競争力が落ちれば従業員全体も不幸になる。連合が時代の変化をつかめていないことの影響は大きいといえよう。


◎「生産性を上げられる」?

脱時間給」を「もっと生産性を上げられる働き方」だと水野編集委員は言うが、根拠はあるのか。まともな根拠として考えられるのは「残業代を気にせずに従業員を働かせられるので、1人当たりの労働時間を増やす効果がある」ということぐらいだ。これだと、労働者としては残業代なしで負荷が増える結果になる。そんな制度を連合が支持する方がおかしい。

単純に時間に比例して賃金を払うよりも、成果や実績に応じた処遇制度が強い企業をつくることは明らかだ」という説明も誤解を招く。仮にその通りだとしても、現行制度の下で「成果や実績に応じた処遇制度」が禁止されているわけではない。歩合給の比率が高い仕事はたくさんあるし、給与水準を決める際に「成果や実績に応じた」ものにするのは珍しくない。例えばタクシー会社では運転手の給与を「単純に時間に比例して賃金を払う」仕組みにしているだろうか。

また、脱時間給制度が導入されても、「給与は入社年次に応じて自動的に決まる。成果部分はなし」という方式は採用できる。水野編集委員の解説だと、現状では「成果や実績に応じた処遇制度」を採用できず、「脱時間給」になると一気に成果重視になるような印象を受ける。だが、そう理解するのは誤りだ。

ついでに、28日の「政労使合意なくても労基法改正を確実に」という社説に奇妙な説明があったので紹介したい。

【日経の社説】

脱時間給は長時間労働を招きかねず、残業を規制する動きと矛盾する、とも指摘される。だが新制度では本人が工夫して効率的に働けば、仕事の時間を短縮できる。その利点に目を向けるべきだ。


◎「脱時間給」ゆえの利点?

新制度では本人が工夫して効率的に働けば、仕事の時間を短縮できる」と言われると、「今の制度では無理なの?」と聞きたくなる。「本人が工夫して効率的に働けば、仕事の時間を短縮できる」のは、「脱時間給」を導入してもしなくても変わらない。それを「脱時間給」特有の「利点」のように書くのは感心しない。

しかも社説の筆者は「その利点に目を向けるべきだ」と説いている。結局、「働き過ぎなんか心配要らない。自分で工夫して仕事の時間を短縮すれば済む話だ」とでも言いたいのだろうか。


※今回取り上げた記事

誰のための連合か
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170728&ng=DGKKASDC27H2W_X20C17A7MM8000

政労使合意なくても労基法改正を確実に
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170728&ng=DGKKZO19361230Y7A720C1EA1000

※記事の評価はともにD(問題あり)。 水野裕司編集委員への評価もDを維持する。

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