2021年8月10日火曜日

日経 川崎なつ美記者の「無意識の偏見」が垣間見える「Women’sトレンド」

女性問題を扱った記事で「無意識の偏見」という言葉を見つけたら要注意だ。9日の日本経済新聞朝刊女性面に川崎なつ美記者が書いた「Women’sトレンド~10代、無意識に思考制限?」という記事は特に問題が多かった。中身を見ていこう。

大バエ灯台

【日経の記事】

ガールスカウト日本連盟(東京・渋谷)の調査で、女子高校生の48%が「男子は女子よりも理数系の能力が高い」と考えていることが分かった。だが、国際学力調査の結果によると、日本の女子の理数系の得点は他国の男子よりも高い。同連盟は「『女の子はこういうものだ』とのメッセージを日々無意識に受け取り、思考が制限されている」と指摘する。


◎強引な比較に意味ある?

男子は女子よりも理数系の能力が高い」と「考えている」人は間違っているのだろうか。「国際学力調査」の結果では、日本に限っても世界でも「男子」の「理数系の得点」が「女子」を上回っているとしよう。この結果を基にすれば「男子は女子よりも理数系の能力が高い」と認識するのが自然だ。「差はない」とか「女子の方が上だ」と認識する方が無理がある。

しかし川崎記者はそう思っていないようだ。「日本の女子の理数系の得点は他国の男子よりも高い」と驚くような比較を持ち出してくる。「国内では男子が上だが、世界的に見れば差はない」といった話なら分かる。そうではなく「日本の女子の理数系の得点」を「他国の男子」と比べている。

例えば「女性の所得は男性に比べて少ないのか」との問いに対して「少なくない。日本の女性の平均所得は北朝鮮の男性の平均所得を上回っている」といった比較に意味があるだろうか。

ガールスカウト日本連盟」の「『女の子はこういうものだ』とのメッセージを日々無意識に受け取り、思考が制限されている」とのコメントも謎だ。「男子は女子よりも理数系の能力が高い」と認識している「女子」はマインドコントロールでも受けているようなコメントだ。しかし「国際学力調査」の結果が「男子」優位を裏付けているのならば、ごく自然に状況を認識しているだけだ。「差がない」「女子の方が上」と認識している「女子」の方が誤った「メッセージ」を受け取っている可能性が高い。

続きを見ていこう。


【日経の記事】

調査は2020年6~7月にインターネットで実施し、700人の回答を得た。「女子は男子よりも料理ができたほうがいい」と考える人は44%にのぼった。一方で、女子も「経済的な自立が必要」「大学教育を受けることが重要」と答えた人もそれぞれ95%を超えた。高等教育や経済的自立は男女の差なく必要だと感じている一方で、家庭内の役割には無意識の思い込みがあるようだ


◎なぜ「無意識」?

家庭内の役割には無意識の思い込みがあるようだ」と川崎記者は言う。「女子は男子よりも料理ができたほうがいい」と考える人に「思い込み」があるとしても、なぜそれが「無意識」になってしまうのか。「女子はやっぱり料理ができなくっちゃ」と普段から公言している女性でも「無意識」なのか。

むしろ「女子は男子よりも料理ができたほうがいい」という考えを「家庭内の役割」として捉えているところに川崎記者の「無意識の思い込み」があるのではないか。「男性をつかまえる上では料理ができた方がいい。でも結婚したら料理はしない」と考える女性がいてもおかしくない。

今回の記事では「10代でも無意識の偏見がある」とのタイトルで表を載せており、そこには「女子も経済的な自立が必要(98%)」「女子も大学教育を受けることは重要(96%)」「男子は女子よりも理数系の能力が高い(48%)」「女子は男子よりも料理ができたほうがいい(44%)」という4つの項目がある。

女子は男子よりも料理ができたほうがいい」という考えを川崎記者は「無意識の偏見」だと見ているのだろう。しかし無理がある。事実に反している訳ではないからだ。あくまで個人の価値観の問題だ。それに、自らの利益を増やすという意味で正しい考えとなる可能性もある。

「料理の技術が高い女性は男性からの評価が高く、高年収の男性と結婚する確率が高まる。一方、男性は料理の技術を高めても女性に評価されない」という傾向が確認できる場合、高年収男性との結婚を望む女性にとって「女子は男子よりも料理ができたほうがいい」という考えは明らかに正しい。

女子も経済的な自立が必要」「女子も大学教育を受けることは重要」「女子は男子よりも料理ができたほうがいいとは言えない」ーー。川崎記者はそう信じているのだろう。そこを否定するつもりはない。しかし、自分と反する考えを「偏見」とみなすのはやめた方がいい。上記の3つは基本的に価値観の問題だ。

「高年収の男性と結婚して専業主婦になるのが夢」という価値観が間違っている訳ではない。そういう女性が「女子に経済的な自立が必要とは限らない」と考えているとしても「偏見」とは言えない。むしろ「女子も(全員が)経済的な自立が必要」という考えの方が「偏見」に近い。「経済的な自立」なしに楽しく有意義な人生を送る道は明らかにある。

こうやって見てくると「無意識の偏見」の持ち主は川崎記者の方だと思えてくる。「そんなことはない。なぜならば~」と川崎記者は反論できるだろうか。


※今回取り上げた記事「Women’sトレンド~10代、無意識に思考制限?」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210809&ng=DGKKZO74558380W1A800C2TY5000


※記事の評価はD(問題あり)。川崎なつ美記者への評価も暫定でDとする。

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