MMT(現代貨幣理論)は異端視されキワモノ扱いされる傾向が強かった。MMT支持者としては忸怩たる思いがあったが、潮目が変わってきたのかもしれない。「高市早苗前総務大臣が意欲を語る ~ニューアベノミクスとも言える『サナエノミクス』が『日本経済強靭化計画』」という17日付のニッポン放送オンラインの記事を読んでそう感じた。自民党総裁選に出馬しそうな政治家までがMMTに基づいて政策提言をしていると取れる内容だったからだ。
夕暮れ時の工事現場 |
ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』での高市氏の発言を見ていこう。
【高市氏の発言】
残念ながら、プライマリーバランスを時限的に凍結するということにつながるのですけれども、やはり政策が軌道に乗るまでは、どうしても追加的な国債発行は避けられなくなってしまいます。イェール大学の浜田宏一名誉教授がわかりやすい表現をしていましたが、政府の財政収支を気遣うあまり、現在苦しむ人を助けず、子どもの教育投資を怠って、生産力のある人材資本を残さなくてもよいのかと。「目の前のことに拘って、いま救わなければいけない人が救われなくなる」と、このように表現しておられたのです。ただ、いま追加的な国債発行をしたとしても、日本国が破産するというわけではない。つまり私は国債発行というのは避けるべきものではなく、必要な経費の重要な財源として活用すべきものだと思っています。
特に日本の場合は、日本銀行に通貨発行権があります。自国通貨建ての国債発行ができますから、デフォルトの心配はない。要は債務不履行の心配はないのです。
◎「債務不履行の心配はない」はその通り
「インフレ率2%を達成するまでは、時限的にですが、プライマリーバランスは凍結する」と高市氏は言う。「インフレ率2%」にこだわる意味はないと思うが「財政収支を気遣うあまり、現在苦しむ人を助けず」に放置して良いのかという考え方は評価できる。
そして「自国通貨建ての国債発行ができますから、デフォルトの心配はない。要は債務不履行の心配はないのです」という見方はMMTと大きく重なる。
続きを見ていこう。
【高市氏の発言】
それから、いまは金利が低い。だからプライマリーバランスが赤字でも、名目金利を上回る名目成長率を達成して行けば、財政が破綻することはありません。財政はむしろ改善します。企業も、借金で投資を拡大して成長しています。国も成長につながる投資をすれば、将来の納税者にも恩恵が及ぶのです。こういう危機管理投資に必要な国債発行は躊躇すべきではないと考えています。
◎整合性の問題が…
この発言は問題がある。「自国通貨建ての国債発行ができますから、デフォルトの心配はない。要は債務不履行の心配はないのです」と見ているのであれば「名目金利を上回る名目成長率を達成」しようがしまいが財政破綻はあり得ない。この辺りは高市氏もまだ考えを整理できていないのだろう。
高市氏は一連の発言でMMTに直接言及している訳ではない。ただ「通貨発行権を持つ国で自国建て政府債務のデフォルトを心配する必要はない。インフレの高まりを抑えられている状況では、財政赤字を気にせず必要と思える支出をすべき」というMMTの基本的な考え方とかなり一致している。
MMT寄りの政治家として高市早苗氏と「サナエノミクス」に注目したい。
※今回取り上げた記事「高市早苗前総務大臣が意欲を語る ~ニューアベノミクスとも言える『サナエノミクス』が『日本経済強靭化計画』」https://news.1242.com/article/308889
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