2021年7月5日月曜日

「無痛分娩」は増えるべき? スプツニ子!氏が日経女性面で見せた雑な主張

5日の日本経済新聞朝刊女性面にアーティストのスプツニ子!氏が書いた「ダイバーシティ進化論~関心高まるフェムテック 体の課題 置き去りにしない」という記事は雑な主張が目立った。中身を見ながら具体的に指摘したい。 

筑後川

【日経の記事】

だが、女性の体への理解はまだまだ途上だ。例えば、日本では麻酔によって陣痛を和らげる無痛分娩が浸透していない。麻酔医の不足などに加え「出産が痛いのは当たり前」との固定観念が足かせになっている

「忍耐は美徳」という考え方が根底にあるのだろう。「痛みを伴わない出産では子に愛情がわかない」という言説すら聞く。それに違和感を覚える女性もいる。なのに課題解決が進まないのは、医療や政治の現場の意思決定層に女性が少なく、当事者のつらさが実感されづらいからではないか


◎何が問題?

課題解決が進まない」とスプツニ子!氏は言うが、何が問題なのかはっきりしない。「無痛分娩」を希望しても叶わない例が多いのならば分かるが、そうは書いていない。

『出産が痛いのは当たり前』との固定観念が足かせ」になって「無痛分娩」が増えないとしても、希望する人には対応できる環境があるのならば、それでいいのではないか。

出産が痛いのは当たり前」という考えが間違っている訳でもない。「痛みを伴わない出産では子に愛情がわかない」と感じる女性がいるかもしれない。だが、周りがとやかく言う問題でもない。

もちろん、その考えに「違和感を覚える女性もいる」だろう。だからと言って「違和感を覚える女性」が正義であり、「痛みを伴わない出産では子に愛情がわかない」と感じる女性が考えを変えるべきともならないはずだ。

無痛分娩」を選ぶかどうかは個人任せでいいのではないか。スプツニ子!氏は「無痛分娩」が増えてほしいようだが、個人の自由な選択をなぜ尊重できないのか。

そして話はなぜか「課題解決が進まないのは、医療や政治の現場の意思決定層に女性が少なく、当事者のつらさが実感されづらいからではないか」となってしまう。

痛みを伴わない出産では子に愛情がわかない」と感じる女性の考え方を「医療や政治の現場の意思決定層」が変えさせるべきなのか。「医療や政治の現場の意思決定層に女性」がたくさんいると「痛みを伴わない出産では子に愛情がわかない」と考える女性は減っていくのか。

誰かに迷惑をかけている訳でもないのに「痛みを伴わない出産では子に愛情がわかない」と感じる人の考えを「医療や政治の現場の意思決定層」が変えさせようとする社会は、個人的には怖い。

続きを見ていこう。


【日経の記事】

気になって世界経済フォーラムの男女平等の度合いを示すジェンダー・ギャップ指数と、各国の無痛分娩の普及率を比較してみた。すると、21年のジェンダー・ギャップランキングで156カ国中2位のフィンランドは普及率が9割だった。16位のフランスは8割、23位の英国は6割だ。一方、120位の日本は6%にとどまる。


◎相関がある?

ジェンダー・ギャップ指数」と「無痛分娩の普及率」には相関関係があるとスプツニ子!氏は言いたいのだろう。しかし、なぜか「2位」「16位」「23位」と法則性のない順位で見ている。これでは「相関関係があるように見えるサンプルを恣意的に選んだ」と勘繰られても仕方がない。

ジェンダー・ギャップ指数」の10位以内にはナミビア、ルワンダといった途上国も入っている。本当に「ジェンダー・ギャップ指数」と「無痛分娩の普及率」には相関関係があるのか。

さらに言えば、相関関係があるとしても因果関係があるとは限らない。なのでデータの扱いには慎重になるべきだが、スプツニ子!氏にはそうした配慮が感じられない。

無痛分娩の普及率」は「9割」の方が「6%」より優れている訳ではない。個人が自由に選択した結果ならば「9割」でも「6%」でも問題はない。スプツニ子!氏は「無痛分娩」支持派なのだろう。だからと言って、考えを異にする女性を自らの側に誘導すべきなのか。改めて考えてほしい。


※今回取り上げた記事「ダイバーシティ進化論~関心高まるフェムテック 体の課題 置き去りにしない

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210705&ng=DGKKZO73494140S1A700C2TY5000


※記事の評価はD(問題あり)

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