14日の日本経済新聞朝刊1面に載った「デジタルのジレンマ(2)格差広げる『ゼロ円コピー』~勝者総取り、多様性奪う」という記事は説得力がなかった。「デジタル経済」を論じる記事では「勝者総取り」の話がよく出てくるが、現実に「勝者総取り」と言えるケースは少ない。今回の記事で「勝者総取り」に触れた部分を見てみよう。
夕暮れ時のうきは市 |
【日経の記事】
一方で「勝者総取り」の弊害もある。米ローリングストーン誌の20年の音楽配信調査では、上位1%のアーティストの曲が総再生回数の9割を占めた。CDでは上位1%が稼ぐ売り上げは全体の5割程度。楽曲配信の収益は再生回数に応じて還元されるため、一部のスターにもうけが集中する。米国でバンド活動をするジョーイ・デフランチェスコさんは「CD時代と異なり無名のアーティストは稼げなくなった」と嘆く。
◎それで「総取り」?
「上位1%のアーティストの曲が総再生回数の9割を占めた」のは「勝者総取り」と言えるのか。1組の「アーティスト」が「総再生回数」の全てを占めたのならば、見事な「勝者総取り」だ。しかし「9割」止まり。しかも「上位1%」には数多くの「アーティスト」を含むはずだ。それを「勝者総取り」と言われても…。
「CD時代と異なり無名のアーティストは稼げなくなった」というコメントにも同意できない。「無名のアーティスト」の稼ぎを「CD時代」と比べたデータが記事には見当たらない。
「CD時代」も今も「無名のアーティスト」の稼ぎが少ないのは同じだろう。「CD時代」でも「無名のアーティスト」が自分たちの「CD」をレコード店などの流通経路に載せるのはかなり難しかったはずだ。
音楽制作ソフトの普及などで、資金がなくてもプロと変わらない完成度の音楽を作ってユーチューブなどで発信しやすくなっている。そこで注目されて「無名のアーティスト」から一気に「上位1%」へ入る道も開けてきた。
「勝者総取り」→「無名のアーティストは稼げなくなった」という解説は色々な意味で違う気がする。
※今回取り上げた記事「デジタルのジレンマ(2)格差広げる『ゼロ円コピー』~勝者総取り、多様性奪う」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN25E830V20C21A5000000/
※記事の評価はD(問題あり)
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