5日の日本経済新聞朝刊1面に載った「米軍がアジアに対中ミサイル網 6年で2.9兆円要望~日比と協力焦点」という記事には色々と疑問を感じた。最初の段落を見た上で具体的に指摘したい。
有明海 |
【日経の記事】
米政府と議会はインド太平洋地域で中国への抑止力を強化するため、2022会計年度(21年10月~22年9月)から6年間で273億ドル(約2.9兆円)の予算を投じる案を検討する。沖縄からフィリピンを結ぶ第1列島線に沿って米軍の対中ミサイル網を築く。台湾や南シナ海の有事を想定しており、同盟国との協力も課題となる。
◇ ◇ ◇
(1)「沖縄からフィリピンを結ぶ第1列島線」?
中村亮記者は「沖縄からフィリピンを結ぶ第1列島線」と書いているが、記事に付けた地図を見ると「第1列島線」は九州とベトナムを結んでいる。「沖縄からフィリピン」はその一部だ。地図が正しいとすると「沖縄からフィリピンを結ぶ第1列島線」という説明には問題がある。
(2)「日比と協力焦点」という見出しはどこから?
「同盟国との協力も課題となる」とは書いているが、記事を最後まで読んでも「日比と協力焦点」という話は出てこない。「同盟国との協力」が「日比」限定ならば、本文中でもそう明示すべきだ。
(3)韓国はなぜ対象外?
一番分からなかったのが「米軍の対中ミサイル網を築く」のに、なぜ在韓米軍は「ミサイル網」を築かないのかだ。距離的には中国にかなり近い。あえて対象に入れていないのであれば、その理由は触れてほしかった。
(4)中国は台湾で活動?
記事中に「背景には、台湾や東シナ海、南シナ海での中国の活動に警戒が高まっていることがある」との記述がある。中国は実効支配していない「台湾」で「活動」しているのか。諜報活動などを指しているのか。あるいは「台湾近海」での「活動」との趣旨か。説明が不十分だ。
(5)日本にメリット?
「日本にとってプラスだ」という「日本政府高官」のコメントが記事には出てくる。しかし「マイナス」としか思えなかった。記事でも「アジア諸国は米国のミサイル部隊を受け入れるほど中国の攻撃対象となり、経済で報復を受けるリスクもある」と書いている。
「台湾や南シナ海の有事を想定」した「対中ミサイル網」を日本に置く意味があるのか。日本を守るための「対中ミサイル網」ならば、まだ分かる。「台湾」有事の際に日本国内から中国に向けて「ミサイル」が発射され、その報復として日本で大きな被害が出た時に「日本にとってプラス」だったと振り返れるのか。
国際1面の関連記事では「(日本の)財政負担も懸念材料」とも書いている。益が少なく害が多い「対中ミサイル網」をカネを出して配備してもらう気が知れない。これが日経の大好きな「日米同盟の強化」なのか。
中村記者には、その辺りも考えてこれから記事を書いてほしい。
※今回取り上げた記事「米軍がアジアに対中ミサイル網 6年で2.9兆円要望~日比と協力焦点」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210305&ng=DGKKZO69681580V00C21A3MM8000
※記事の評価はD(問題あり)。中村亮記者への評価はDで据え置く。中村記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
メキシコは「低税率国」? 日経1面「税収 世界で奪い合い」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/09/blog-post_3.html
カナダが「欧州」に見える日経「米欧、軍事費でも摩擦」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_8.html
EU批判は「NATO批判」? 日経 中村亮記者に注文
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/eunato.html
日経「米欧とカナダ、ロシア追加制裁」に見える中村亮記者の拙さhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/blog-post_85.html
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