週刊ダイヤモンド3月27日号に載った「激突座談会~日本と米国の株高はバブルか?」という記事はツッコミどころが多い。「強気派のリーダー格、松本大・マネックスグループCEOと弱気派・バブル崩壊派の旗頭である小幡績・慶應義塾大学大学院准教授が、モデレータを務める経済評論家の山崎元氏を挟んで激突する」という内容だ。「座談会」では特に小幡氏のおかしな発言が目立った。
筑後川と耳納連山 |
具体的に見ていこう。
【小幡氏の発言】
私は今の株高は明らかにバブルで、しかも最終局面に近いと思っています。その理由は単純で、株価水準とか数字は関係ない。
これは私独自の定義なんですが、投資家が他人の投資行動に基づいて自分の投資を決めている状態にあって、しかも大多数の投資家がそうであり、かつ買っている場合、これがバブルです。
だから買いが続けば、バブルは続きます。もう3万円だろうが関係なく上がる。みんなが買っているから買う。他の人が儲かっているのに自分が儲からないのは嫌だから買うし、最後まで乗って人よりも儲けたいから買う。
◎説明になってないような…
「理由は単純」と言うが「最終局面に近い」と見る「理由」に言及していない。
「明らかにバブル」という判断にも疑問が湧く。「投資家が他人の投資行動に基づいて自分の投資を決めている」かどうかを小幡氏はどうやって確認しているのか。「大多数の投資家がそう」かどうかを確認するのは非常に難しい。聞き取り調査をしても「他の投資家が買っているから自分も買っている」と答える人が「大多数」になるとは考えにくい。本音の部分では他者追随であっても、それを正直には申告しない人が多そうだ。
そもそも「みんなが買っている」状況は基本的にあり得ない。売買が成立している時には必ず売り手がいる。株価が上がり続けているからと言って「みんなが買っている」のではない。必ず売っている投資家がいる。
バブルに関する小幡氏の発言をさらに見ていこう。
【小幡氏の発言】
僕はやっぱりバブルだと思っているから、真面目な読者に勧める戦略としては2つあります。
1つ目の戦略は、投資対象を全て流動性の高い大型優良株にしておくこと。流動性のあるものは、本当にバブルが崩壊したと自分が思って、そこから売っても間に合うんです。ちょっと売りのタイミングが遅れただけで、売れなくなることはないですから。
バブルのプロセスの最後には上昇があるので、ギリギリまで身構えていてヤバいと思ったら手放す。もう1つは流動性のないものは上がらないし下がりもしないので、やはり自分が好きで供給が限られていて増えないものを持っておく。
◎「流動性のないものは上がらないし下がりもしない」?
まず「流動性のないものは上がらないし下がりもしない」という説明が謎だ。「流動性のないもの」は想定しにくいので、ここでは「流動性の非常に低いもの」と仮定しよう。例えば昭和の時代の旧車でどうか。「供給が限られていて増えないもの」とは言える。しかし価格は上がりもするし下がりもする。
ここで言う価格とは評価額のことだ。「流動性」が低くて売買が成立していなくても評価額は変動する。1年前に1000万円で入手した旧車に対して100万円の買い注文しかない状況になっていても不思議ではない。
「大型優良株」の話は小幡氏のもう1つの発言を見てから考えたい。
【小幡氏の発言】
僕は今年、バブルが崩壊すると言っている。そんなすぐに結果が出て、外れが明確で、皆に非難される可能性のあることを断言する人間は僕ぐらいでしょうが、今年21年中にはじける。なぜかといえば、上がり過ぎたから。上がるスピードが速過ぎました。
株価は乱高下しながら、例えば新々コロナの出現など何らかのショックで明らかに下がっていくと思う。もう1つ、米国債利回りの上昇で株価が下がったように、何の理由もないのに暴落する可能性もあります。
◎バブル崩壊の基準は?
小幡氏は「外れが明確」と言うが、そうは思えない。「バブルが崩壊」したかどうかの基準を示していないからだ。例えば日経平均が年末に2万7000円になるとしよう。この場合「バブルが崩壊」したと言えるのか。何とも判断しにくい。
「投資家が他人の投資行動に基づいて自分の投資を決めている状態にあって、しかも大多数の投資家がそうであり、かつ買っている場合、これがバブル」と言うのが小幡氏の考えだ。これだと株価が上がった場合でも「投資家が他人の投資行動に基づいて自分の投資を決めている状態」が解消されたから「バブル」は「崩壊」したとの弁明が成り立つ。やはり「外れが明確」には程遠い。
「今年21年中にはじける。なぜかといえば、上がり過ぎたから」という説明も雑だ。「スピード」はどのぐらいになると「上がり過ぎ」なのかが分からない。また一定の「スピード」を超えた場合に「バブルが崩壊」するとしても、それがなぜ「今年21年中」なのかも説明していない。
「今年21年中」に「バブルが崩壊」のならば、もう時間がない。本当にそう思えるのならば「大型優良株」は早めに売却した方が良さそうだが小幡氏の考えは違う。
「本当にバブルが崩壊したと自分が思って、そこから売っても間に合う」と小幡氏は言う。「間に合う」とはどういうことか。例えば日経平均が2万円を割って初めて「バブルが崩壊」したと感じる人でも「ちょっと売りのタイミングが遅れただけ」で済むのか。
「バブルが崩壊」する時には「株価は乱高下しながら」水準を切り下げていくと小幡氏は見ている。だとしたら「本当にバブルが崩壊した」かどうかの判断はかなり難しい。小幡氏の助言に有用性は感じられない。
結論としては「バブル崩壊に関する小幡氏の発言を参考にするな」でいいだろう。
※今回取り上げた記事「激突座談会~日本と米国の株高はバブルか?」
※記事の評価は見送る。小幡績氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。
小幡績 慶大准教授の市場理解度に不安を感じる東洋経済オンラインの記事https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/03/blog-post_18.html
「確実に財政破綻は起きる」との主張に無理がある小幡績 慶大准教授の「アフターバブル」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post.html
やはり市場理解度に問題あり 小幡績 慶大准教授「アフターバブル」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post_4.html
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