17日の日本経済新聞朝刊オピニオン面に載った「中外時評~政治家は身内にこそ厳しく」という記事は、大石格上級論説委員が書いた記事の中ではまともな方だ。しかし、もちろん問題はある。その部分を見ていこう。
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【日経の記事】
その意味で、いま話題の菅義偉首相の長男が絡んだ総務省幹部接待はかなり異色の展開である。
政治家の子どもが企業勤めをすることはよくある。だが、大抵は若いときの社会人修業としてであり、いちど秘書に転じたら、再び企業勤めをするのは親が落選したときぐらいだった。やや下品な物言いをするならば、政治は足を踏み入れたら最後、死ぬまで色眼鏡で見られ続ける世界と目されてきたわけだ。
ところが、菅氏の長男は総務相秘書官ののち、父の事務所で働くのではなく、サラリーマンの道を選んだ。本当に菅氏の言う通り「完全な別人格」になったのだろうか。15日の参院予算委員会で、勤め先である東北新社の中島信也社長は長男のことを「優秀な若者」と持ち上げた。
さて、これらの弁を信じるべきか、信じざるべきか。国会議員ののち、ソフトバンク社長室長を務めた嶋聡氏のような例もないわけではない。
それを踏まえたうえで、あえていえば、菅首相はなぜ永田町の常識に挑むような道を我が子に選ばせたのか。ふつうの秘書にしておけば、こんな大ごとにならなかったのにである。
◎「別人格」でない状態とは?
まず「別人格」が引っかかる。複数の意味があるが、ここでは「人格」を「法律上の行為をなす主体。権利を有し、義務を負う資格のある者」(デジタル大辞泉)としよう。
「菅氏の長男」が「総務相秘書官」だった時には「完全な別人格」ではなかったと大石上級論説委員は見ているようだ。個人的には、当時も今も「菅氏」とその「長男」は「完全な別人格」だと思える。部分的にでも同一の「人格」という状態がよく分からない。両者が共謀して罪を犯したとしても「人格」が重なる感じはしない。
「さて、これらの弁を信じるべきか、信じざるべきか」と大石上級論説委員は言うが「首相の長男だから」という理由で「長男」が「東北新社」に入っていた場合は「完全な別人格」という説明が誤りとなるのか。
ついでに言うと「菅首相はなぜ永田町の常識に挑むような道を我が子に選ばせたのか」という説明も気になる。「長男」は30代で「東北新社」に入ったようだ。既に立派な成人だ。その人物に関して「なぜ永田町の常識に挑むような道を我が子に選ばせたのか」と問うべきなのか。常識的に考えれば進む「道」は「長男」が選んでいる。「菅氏」と「長男」は違うと言うのならば、その説明が要る。
それに「なぜ永田町の常識に挑むような道を我が子に選ばせたのか」と疑問に思うのならば、取材をしてみればいいではないか。「菅氏」への取材が難しくても周辺に話を聞けるはずだ。何のために政治の世界を長く取材してきたのか。
今回の記事は「政治家は身内にこそ厳しく」という当たり前のことを訴える捻っていない内容だ。そこは良しとしよう。だったら、せめて取材は綿密にやったらどうか。もうそんな気力は残っていないのかもしれないが…。
※今回取り上げた記事「中外時評~政治家は身内にこそ厳しく」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210317&ng=DGKKZO70023910W1A310C2TCR000
※記事の評価はD(問題あり)。大石格編集委員への評価もDを維持する。大石編集委員については以下の投稿も参照してほしい。
日経 大石格編集委員は東アジア情勢が分かってる?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_12.html
ミサイル数発で「おしまい」と日経 大石格編集委員は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_86.html
日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_15.html
日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_16.html
日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_89.html
どこに「オバマの中国観」?日経 大石格編集委員「風見鶏」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/08/blog-post_22.html
「日米同盟が大事」の根拠を示せず 日経 大石格編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_41.html
大石格編集委員の限界感じる日経「対決型政治に限界」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_70.html
「リベラルとは何か」をまともに論じない日経 大石格編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/blog-post_30.html
具体策なしに「現実主義」を求める日経 大石格編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/12/blog-post_4.html
自慢話の前に日経 大石格編集委員が「風見鶏」で書くべきこと
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/04/blog-post_40.html
米国出張はほぼ物見遊山? 日経 大石格編集委員「検証・中間選挙」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/blog-post_18.html
自衛隊の人手不足に関する分析が雑な日経 大石格編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_27.html
「給付金申請しない」宣言の底意が透ける日経 大石格編集委員「風見鶏」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/05/blog-post_74.html
「イタリア改憲の真の狙い」が結局は謎な日経 大石格上級論説委員の「中外時評」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post_7.html
菅政権との対比が苦しい日経 大石格編集委員「風見鶏~中曽根戦略ふたたび?」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post_18.html
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