2021年2月25日木曜日

プレジデントオンラインでの「少子化」の解説に無理がある田中俊之 大正大准教授

2月24日付のプレジデントオンラインに載った「少子化も女性管理職不足も『女性のせい』と考える人に欠けている視点」という記事は説得力に欠けた。「日本では少子化が深刻な問題になっています。原因についてもさまざまな議論が行われていますが、その中には社会学の観点から見て正しくないと思われるものもあります。その代表例が『少子化の進行は女性の社会進出が進んだせいだ』というものでしょう」と筆者である大正大学心理社会学部人間科学科准教授の田中俊之氏は言う。しかし「正しくない」とは思えなかった。

電柱と烏

記事の一部を見てみよう。

【プレジデントオンラインの記事】

こうした変化は、時期的には女性の社会進出やパートの増加、フルタイム共働きの増加などと重なっているため、一見しただけでは「ベビーブーム時代に比べて働く女性が増えたせい」と思ってしまいがちです。

しかし、2019年の1.36という数字は、結婚する人が減った結果でもあります。男女問わず結婚する人が減れば出産も減りますから、女性のフルタイム勤務だけに原因を求めるのは正しい考え方とは言えません。

また、他の先進国では、フルタイム共働きが増えても出生率はおおむね維持されています。一方、日本では待機児童の問題もあり、女性が「育児か仕事か」と二択を迫られるケースも少なくありません。働く女性が増えたのは海外も日本も同じなのに、なぜ日本だけここまで出生率が下がっているのでしょうか


◎色々と疑問点が…

少子化の進行は女性の社会進出が進んだせいだ」という見方について最初は「社会学の観点から見て正しくないと思われる」と言っていた田中氏だが、読み進めると「女性のフルタイム勤務だけに原因を求めるのは正しい考え方とは言えません」とトーンダウンしている。

個人的には「女性の社会進出」と「少子化の進行」には因果関係があると思っている。しかし「女性のフルタイム勤務だけに原因を求める」つもりはない。様々な要因が絡んでいるのは当然だ。

記事の最初の方では「少子化の進行は女性の社会進出が進んだせいだ」という見方を全否定していたのに、その後に「原因はそれだけではない」とすり替えている。ここが、まずズルい。

そして「他の先進国では、フルタイム共働きが増えても出生率はおおむね維持されています」「働く女性が増えたのは海外も日本も同じなのに、なぜ日本だけここまで出生率が下がっているのでしょうか」と続けている。

低い「出生率」は「先進国」共通の問題だ。人口置換水準と言われる2.1程度の「出生率」を「他の先進国」が揃って維持しているのに、日本だけが1.4程度の低い「出生率」ならば「なぜ日本だけ」となるのも分かる。しかし、そうではない。

先進国」の「出生率」は基本的に2未満。韓国のように1を下回っている国もある。「なぜ日本だけここまで出生率が下がっているのでしょうか」という問題提起がそもそも間違っている。「なぜ日本を含めて先進国では出生率が低くなってしまうのでしょうか」などと問うべきだ。

2019年の1.36という数字は、結婚する人が減った結果」でもあるので「女性のフルタイム勤務だけに原因を求めるのは正しい考え方とは言えません」という説明も問題がある。「女性のフルタイム勤務」が増えると「結婚する人」が減り、その結果として「少子化の進行」を招いたのだとしよう。この場合「女性のフルタイム勤務だけに原因を求めるのは正しい」と言える可能性がある。

記事の続きを見ていこう。


【プレジデントオンラインの記事】

そう考えていくと、日本の出生率低下は、働く女性が増えたことが原因なのではなく、その変化に対応しきれていない社会に原因があるということがわかってきます。そのひとつが、家事育児は女性がするものだという、昔ながらの「見えないルール」です。社会は変わったのにルールは変わっていない、ここに出生率低下の根本原因があるように思います。


◎またおかしなことを…

そう考えていくと、日本の出生率低下は、働く女性が増えたことが原因なのではなく、その変化に対応しきれていない社会に原因があるということがわかってきます」と田中氏は言う。しかし、考え方や状況認識が間違っているので、それに基づく結論は支持できない。

田中氏は最初から「日本の出生率低下は、働く女性が増えたことが原因なのではなく、その変化に対応しきれていない社会に原因がある」と信じているのだろう。「結論ありきだから無理のある主張になってしまう」と考えると腑に落ちる。

第2次ベビーブームの頃に今より「出生率」が大幅に高かったのは、男性が家事・育児に協力的だったからなのか。当時の方が「家事育児は女性がするもの」という意識は強かったはずだ。なのに「出生率」は今をはるかに上回る。その理由を分析しないと「少子化」の本当の原因には辿り着けないだろう。

これをきちんとやると、田中氏のような考え方の人たちには不都合な結論に達するはずだ。しかし「北欧などを見習って日本ももっと社会を進歩的な方向に変えていかないと…」といった結論でないと受け入れられない人は多い。それが「少子化」問題の理解を難しくしている。

「人口置換水準を安定的に上回る出生率を確保したいのならば、発展途上国に逆戻りするような政策もためらうな」というのが「少子化」対策の結論だと思える。

女性管理職」の件に関してもツッコミを入れておきたい。

【プレジデントオンラインの記事】

日本では、管理職になると会社にいる時間が長くなる傾向があります。だからといって「育児は女性がするもの」という社会的プレッシャーは変わりません。これでは「育児と両立できないからなりたくない」と考える女性が出るのも当然でしょう。

しかし、企業側はこの背景を無視して「女性がなりたがらなくて困っている」と結論づけてしまいがちです。本当に女性管理職を増やそうと思うなら、なぜなりたがらないのか、どうすれば解消できるのかを考えなければなりません。そうでなければ、女性のほうは管理職を避けたまま、企業のほうは「女性はなりたがらないものだ」と勘違いしたまま、延々と悪循環が続いていくことになります。


◎「勘違い」はないような…

企業のほうは『女性はなりたがらないものだ』と勘違いしたまま」と田中氏は言うが、「管理職」に「なりたくない」と考える女性が多い傾向があるのならば「企業のほう」に「勘違い」はない。

女性管理職を増やそうと思うなら、なぜなりたがらないのか、どうすれば解消できるのかを考えなければなりません」というのはその通りだ。しかしここでは「(女性は管理職に)なりたがらない」という前提を田中氏も置いている。なのに「女性はなりたがらないもの」がどうして「勘違い」なのか。

女性が「なりたがらない」のであれば、無理して「女性管理職を増やそう」とする必要はない気がする。こう言うと「ジェンダーギャップ指数で日本は…」といった声が聞こえてきそうだ。しかしジェンダーギャップ指数の順位を上げることに意味は感じない。それが国民の幸福につながるならば別だが、「なりたがらない」人を強引に管理職にして指数の順位を上げても、国民の幸福につながるとは思えない。



※今回取り上げた記事「少子化も女性管理職不足も『女性のせい』と考える人に欠けている視点
https://president.jp/articles/-/43400


※記事の評価はD(問題あり)

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