2021年2月14日日曜日

東洋経済「ビットコイン価格が急騰」で緒方欽一記者に抱いた不安

週刊東洋経済2月20日号に緒方欽一記者が書いた「ビットコイン価格が急騰~相場を支える機関投資家」という記事はツッコミどころが多かった。分析が難しいのは分かるが、だからと言って雑な内容が許される訳ではない。緒方記者は市場への理解が足りないのではないか。

夕暮れ時の耳納連山

価格が急騰」した理由を緒方記者は以下のように説明している。

【東洋経済の記事】

機関投資家は、中長期のスパンで資金を投じていると考えられるため、容易には売りに回らず相場を下支えする保有者とみられている。事業会社でも動きがある。2月8日には電気自動車メーカーの米テスラがビットコインを15億ドル購入していることが明らかになった。

機関投資家がビットコイン投資に動くのは、インフレ懸念の高まりが背景にある。新型コロナウイルス感染拡大を受けて米国でも景気対策として巨額の金融緩和と財政出動が行われた。その結果、ドル安が進み、金(ゴールド)などとともにインフレ対策に有効な資産としてビットコインに注目が集まった


◎辻褄が合わないような…

明言はしていないが「米国を中心とした金融界からの投資マネーが相場の主役になりつつある」ことを「ビットコイン価格が急騰」した要因と捉えているようだ。「相場を下支えする」としか書いていないと緒方記者は反論するかもしれない。その場合は「では価格急騰の理由は何?」との疑問が残る。そこの説明は必須だ。

チャートを見ると「ビットコイン価格」は昨年10月頃から騰勢を強めている。「新型コロナウイルス感染拡大を受けて米国でも景気対策として巨額の金融緩和と財政出動が行われた」ことで「インフレ懸念」が高まって「ビットコイン価格」が急騰したと考えるには時期が合わない。だったら、もう少し早く上昇局面を迎えていい。

実際「」は昨年前半の勢いを後半に入ると失っている。なぜ「」との連動性が乏しいのか緒方記者は説明していない。それで「インフレ対策に有効な資産としてビットコインに注目が集まった」と言われても困る。「インフレ懸念」と「ビットコイン価格」を関連付けているのは東洋経済に限らないが、ここにきての「急騰」の説明としては弱い。

以下のくだりにもツッコミを入れておきたい。


【東洋経済の記事】

一方、日本の個人の間は以前のような過熱感がない。暗号資産の国内交換業大手・コインチェック社長の蓮尾聡氏によると、「取引量は2倍、3倍と増えているが、そこまでの盛り上がりはない」という。仮想通貨バブル崩壊後、200万円を超えたビットコイン価格が30万円台まで下がったことで憂き目をみた人も多かったため、慎重姿勢のようだ。

今回は「かつてのバブル相場と違う」といえるのか。蓮尾氏は、「ビットコインは根源的価値がはっきりせず、主に市場での需給で価格が決まるため、(今がバブルかどうかは)わからない」と話す。


◎だったら以前はなぜ「バブル」?

根源的価値がはっきり」しないという特徴は「ビットコイン」の誕生時から変わらないはずだ。なのに、なぜ2017年に「仮想通貨バブル崩壊」が起きたと断定しているのか。「根源的価値がはっきり」しない場合は「バブル」だったかどうかは「わからない」はずだが…。

相場急伸の後に急落すれば「バブル崩壊」と見ているのかもしれない。その場合は「根源的価値がはっきり」しないから「バブル」がどうか「わからない」というコメントに無理が生じる。

今回の記事で最も問題だと感じたのが以下のくだりだ。


【東洋経済の記事】

国内交換業大手・ビットバンク社長の廣末紀之氏はさらなる価格上昇を見込む。着目するのがビットコインの「半減期」だ。

これはビットコイン特有の仕組みで、一定期間(半減期)ごとにネット上で新規に供給されるビットコインの量が減っていくことを意味する。半減期を経るたびに希少性が高まり、市場価格は上がるという理屈が成り立つ


◎織り込み済みでは?

ビットコイン」で「一定期間(半減期)ごとにネット上で新規に供給されるビットコインの量が減っていくこと」が広く知られているのならば「半減期を経るたびに希少性が高まり、市場価格は上がるという理屈」は成り立たない。「半減期」に関する情報は既に市場価格に織り込まれているはずだ。

ビットコイン」の発行枚数は上限が210万枚と決まっているのではないか。だとしたら「希少性」については市場参加者の多くが共通認識として持っているはずだ。「半減期」に関する細かい情報が材料視されることはあるだろうが「半減期を経るたびに希少性が高まり、市場価格は上がるという理屈が成り立つ」という説明はさすがに無理がある。

さらに続きを見ておこう。


【東洋経済の記事】

ただ、金融当局は警鐘を鳴らす。英国の金融規制当局は「暗号資産の価格の大幅な変動は、その価値を評価する難しさと相まって、消費者を高いリスクにさらす」と指摘している。暗号資産はネット上でやり取りできる「財産価値」であり、その価値を信じる人たちの取引から価格が成立している。そのため、需給によって価格が上下に大きく動く

いずれにしてもビットコインの投資主体がかつてとは変わっていることは確か。ドルベースの取引の拡大が今後も続くのかが、大きなカギとなりそうだ。


◎因果関係ある?

ビットコイン」は「その価値を信じる人たちの取引から価格が成立している。そのため、需給によって価格が上下に大きく動く」と緒方記者は言う。そうだろうか。「ビットコイン」は空売りできるようなので「ビットコインにはそもそも価値がない」と考える人が「取引」に参加している可能性は十分にある。

また「需給によって価格が上下に大きく動く」理由として「その価値を信じる人たちの取引から価格が成立している」ことを挙げているのがよく分からない。需要と供給の変化量が大きければ「価格が上下に大きく」動くのは当たり前だ。取引する商品の「価値」を参加者が信じている必要はない。

価値」を信じていない人ばかりが「取引」している方がむしろ「需給によって価格が上下に大きく動く」のではないか。「上がると見たから買ってただけ。ビットコイン自体に価値があるとは思えない」という参加者は逃げ足も速いだろう。


※今回取り上げた記事「ビットコイン価格が急騰~相場を支える機関投資家

https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26175


※記事の評価はD(問題あり)。緒方欽一記者への評価はB(優れている)からC(平均的)に引き下げる。

0 件のコメント:

コメントを投稿