2021年2月17日水曜日

具体策は「労使」丸投げで「雇用と賃金、二兎を追え」と求める日経 水野裕司上級論説委員

 17日の日本経済新聞朝刊オピニオン面に載った「中外時評」で水野裕司 上級論説委員が「雇用と賃金、二兎を追え」と訴えている。 「二兎」を捕える方策があるのだろうと思って読んでみたが、何の策もないようだ。記事の終盤を見てみよう。

岡城跡

【日経の記事】

こうした賃金が抑えこまれる構造も、いよいよ温存できなくなるとの指摘がある。日本総合研究所の山田久副理事長は次のように話す。「コロナ危機対応の各国の財政支出は巨額に上り、感染収束後も債務返済の財政緊縮で数年は成長率が落ちる。貿易量は伸び悩み、日本経済は外需に頼れず内需主導の成長ができるかが問われる。このため賃金の上昇は欠かせなくなる」

雇用維持のため賃金を下げる、という従来のやり方は自殺行為になりうるわけだ。賃金低迷の根にある日本型雇用は「期待」を軸に会社と個人が結びついたシステムだ。会社は勤続年数に応じた社員の技能向上を期待し、年功給を採用。社員も「長く勤めていれば報われるときが来る」といった期待を抱き、会社も順送り人事や年功賃金で応えてきた。

だが技術革新が速いデジタル社会になり、社員が蓄積する技能は通用しなくなるリスクが増している。日本型雇用の根幹である企業内での長期的な人材育成を堅持するのは今や難しい。会社と社員が漠然とした「期待」をかける仕組みは土台が崩れている。

企業が自律的に成長し、雇用と賃金の二兎(にと)を追うための制度づくりを労使は先送りしてきた。春の労使交渉で遅ればせながらその一歩を踏み出せるかが問われる


◎結局「自分たちで考えろ」?

やはり具体策は出てこない。「春の労使交渉で遅ればせながらその一歩を踏み出せるかが問われる」と「労使」に丸投げして記事を締めている。これで上級論説委員としての務めを果たしたことになるのならば楽な仕事だ。

「ホームランを増やすだけでなく同時に打率も上げて二兎を追うべきだ。そのための練習方法はコーチとよく話し合って決めてほしい」と野球評論家がプロ野球選手に求めるようなものだ。

水野上級論説委員は労働分野を担当しているのだろう。何のために取材を続けているのか。「労使」でしっかり話し合って「雇用と賃金」の二兎を追えと求めるだけならば、深い知識や経験がなくてもできる。この分野を長く取材してきたからこそ打ち出せる妙案が欲しい。

「そんなものがあれば書いてるよ」と言うのならば「雇用と賃金、二兎を追え」と他者に求めるのも避けてほしい。その場合は「二兎」を捕えるのは難しいとの前提に立ち、現実的な解を探るべきだ。


※今回取り上げた記事「中外時評雇用と賃金、二兎を追え」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210217&ng=DGKKZO69151880W1A210C2TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。水野裕司上級論説委員への評価もDを据え置く。水野上級論説委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

通年採用で疲弊回避? 日経 水野裕司編集委員に問う(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/11/blog-post_28.html

通年採用で疲弊回避? 日経 水野裕司編集委員に問う(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/11/blog-post_22.html

宣伝臭さ丸出し 日経 水野裕司編集委員「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/blog-post_26.html

「脱時間給」擁護の主張が苦しい日経 水野裕司編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_29.html

「生産性向上」どこに? 日経 水野裕司編集委員「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/04/blog-post_23.html

理屈が合わない日経 水野裕司編集委員の「今こそ学歴不問論」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post.html

日経 水野裕司上級論説委員の「中外時評」に欠けているものhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_9.html

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