大雨で冠水した道路(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
「日本生産性本部(東京・千代田)の調査では、日本の時間当たりの労働生産性は1970年以降、主要先進7カ国中で最下位の状況が続いている。就業者1人当たりの生産性でもジョブ型を導入している国に遅れる」
「ジョブ型」にすると「労働生産性」が高まるという根拠と言えるのは、このくだりだけだ。では本当に「就業者1人当たりの生産性でもジョブ型を導入している国に遅れる」のだろうか。これに関しては記事にグラフを付けている。しかし問題が多い。
「ジョブ型の国は生産性が高い」という説明文を付けたグラフでは、上位からポーランド、エストニア、韓国、スイス、フランス、米国、オランダ、ドイツ、英国、イタリア、ギリシャ、日本となっている。しかし、どの国が「ジョブ型」なのかは不明だ。
記事には「欧米のジョブ型」という言葉も出てくるので、仮に「欧米=ジョブ型」「日韓=メンバーシップ型」だとしよう。これだと韓国が上位にいるので「ジョブ型の国は生産性が高い」とは言い切れない。
さらに問題なのが、このグラフで示した数値が「2015~18年平均」の「就業者1人当たりの労働生産性上昇率」だということだ。あくまで「上昇率」であり、「労働生産性」が高いかどうかは分からない。トップのポーランドが3%超で最下位の日本がわずかなマイナスだとしても「ポーランドの方が日本より労働生産性が高い」とは言い切れない。
結局、この記事では「ジョブ型」にすると「労働生産性」が高まるという根拠は示せていない。
付け加えると「ジョブ型」の国では労働生産性が高く「メンバーシップ型」の国では低いという傾向が見て取れたとしても、「ジョブ型」にすると「労働生産性」が高まると判断するのは早計だ。相関関係があっても因果関係があるとは限らない。
「労働生産性」向上を理由に「ジョブ型」を推してくる日経の記事は怪しい--。とりあえず、そう思っておいた方が良いだろう。
※今回取り上げた記事「コロナが変える働き方(下)日本流のジョブ型雇用模索~解雇規制巡る議論浮上も」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200709&ng=DGKKZO61306530Y0A700C2EA2000
※記事の評価はD(問題あり)
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