2020年7月31日金曜日

9社中5社が増益でも「ネット証券、利益なき繁忙」と日経は言うが…

31日の日本経済新聞朝刊金融経済面に載った「ネット証券、利益なき繁忙~日米大手4~6月、3社減益・1社赤字 手数料無料化が打撃」という記事はかなり強引な作りだ。「利益なき繁忙」という想定にこだわり過ぎだと思える。
冠水した国道210号線(福岡県久留米市)
         ※写真と本文は無関係です

最初の段落では以下のように書いている。

【日経の記事】

日米の主要なインターネット証券が売買手数料の無料化で収益減少に苦しんでいる。2020年4~6月期は新型コロナウイルスによる株価の急落と外出自粛要請で個人投資家の投資意欲は高まった。だが手数料の引き下げ競争が激化し、日米大手9社のうち3社が減益、1社が赤字になった。激しい顧客獲得競争の末、「利益なき繁忙」の様相を呈している



◎残りの5社は?

日米大手9社のうち3社が減益、1社が赤字になった」と書いているが、これだと「5社は増益?」と思ってしまう。記事の後半で「一方、日本では無料化に距離を置いた4社は最終利益が前年同期比5~8割増と大幅増益となった」などと書いてはいる。

普通に考えれば「ネット証券、無料化への姿勢で明暗」といった話になるはずだ。なのに「利益なき繁忙」で押し切っている。

記者の考えた道筋は想像できる。記事に出てくる最初の事例は「信用取引の売買手数料という貴重な収益源を無料にしたauカブコム」だ。この赤字転落を受けて「利益なき繁忙」でまとめられないかと思い付いたのではないか。

しかし残りの日本勢は「5~8割増と大幅増益」。そこで減益が多い米国勢とくっ付けて「利益なき繁忙」に仕立て上げたのだろう。

米国勢に関してもTDアメリトレード・ホールディングは3%の増益。インタラクティブ・ブローカーズは減益だがわずか1%。そもそも米国勢は利益水準が日本勢より1桁多い。米国勢に絞っても「利益なき繁忙」は少し苦しい。

記事を書く上でストーリーをあらかじめ組み立てておくことは重要だ。しかし、縛られてはいけない。時には大胆な修正も要る。今回の記事では、それができていないと感じた。


※今回取り上げた記事「ネット証券、利益なき繁忙~日米大手4~6月、3社減益・1社赤字 手数料無料化が打撃
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200731&ng=DGKKZO62093990Q0A730C2EE9000


※記事の評価はD(問題あり)

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