大分県日田市を流れる三隈川(筑後川) ※写真と本文は無関係です |
21日の日本経済新聞朝刊総合1面に載った「国際商品に緩和マネー~原油や非鉄、3カ月ぶり高値 実需の本格回復道半ば」という記事の最初の段落では以下のように記している。
【日経の記事】
原油や非鉄金属といった国際商品価格が上昇に転じ、約3カ月ぶりの高値を付けた。世界で経済活動が再開し景気回復への期待が強まるなか、各国中央銀行が金融緩和を強化。株と同じリスク資産である商品に投資マネーが向かった。実需も戻り始めたがまだ弱く、新型コロナウイルスの影響で相場上昇の持続力は限られるとの見方もある。
◇ ◇ ◇
ここでは「リスク資産である商品」と明言している。しかし金に関しては話が違ってくる。
【日経の記事】
株高局面で売られやすい「安全資産」の金も緩和マネーが高値を支える。低金利の長期化で国債の金利収入が細り、相対的に金の魅力が高まった。ニューヨーク先物は1トロイオンス1750ドル前後で3月中旬に付けた安値から約2割上昇した。
◎リスク資産であると同時に「安全資産」?
ここでは「『安全資産』の金」と言い切っている。「リスク資産である商品」という説明との関係はどうなるのか。「金は商品ではない」「リスク資産の中には安全資産もある」と言えるのならば成立するが、難しそうだ。
「商品は基本的には『リスク資産』だが、金だけは例外的に『安全資産』」とするのが、最もあり得る説明だと思える。これなら、強引な弁明が不可能ではない。ただ、記事にする場合は「リスク資産である『金以外の商品』」などと書いてほしい。でないと矛盾を感じてしまう。
この記事では原油相場の上昇に関する説明にも問題を感じた。そのくだりも見ておこう。
【日経の記事】
原油はニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物が1バレル39ドル前後と5月初めの約2倍に上がった。各国の経済再開に加え、産油国の大幅減産で需給バランスの改善期待が高まった。
世界最大の原油消費国の米国では需要の4割を占めるガソリンの出荷が増えつつある。4月上旬に前年同期比で半減していたが、経済再開と夏のドライブシーズン入りで6月上旬では2カ月前より5割以上増えた。新型コロナの感染「第2波」への懸念も浮上するが、相場に目立った値下がりは起きていない。
投資マネーの厚みが増したためだ。WTIの投機筋の買い越し幅は3月以降に急拡大し、2年ぶりの高水準圏にある。マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表は「株価の急回復でファンドの運用資産に占める株の比重が高まり、バランスを取るために商品が買われやすくなっている」と分析する。
◎時期が合わないような…
今回の記事では「5月初め」の原油相場と直近を比較している。そして、この間に「相場に目立った値下がりは起きていない」理由として「投資マネーの厚みが増したためだ」と説明している。これは解せない。
記事ではなぜか「WTIの投機筋の買い越し幅は3月以降に急拡大」と書いている。「5月初め」との比較を避けているようだ。
記事に付けたグラフに「投機筋の買い越し残高」が出ている。これを見ると「5月初め」に付けた直近のピークより若干だが「残高」は減っている。つまり「5月初め」との比較では「投資マネーの厚みが増した」とは言えない。
おそらく筆者もそのことを分かっている。だから「3月以降に急拡大」と時期をずらしたのだろう。気持ちは分かるが、ご都合主義的にデータを扱うべきではない。そこは自戒してほしい。
※今回取り上げた記事「国際商品に緩和マネー~原油や非鉄、3カ月ぶり高値 実需の本格回復道半ば」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200621&ng=DGKKZO60606880Q0A620C2EA1000
※記事の評価はD(問題あり)。
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