2020年6月17日水曜日

健診先送りで死亡率上昇の懸念? 日経「コロナで相次ぐ健診休止」に注文

17日の日本経済新聞朝刊企業1面に載った「コロナで相次ぐ健診休止~疾患発見に黄信号 タニタは社員に体組成計」という記事は悪い出来ではない。だが「健診」が有用だとの前提が引っかかった。記事の一部を見ていこう。
岡城跡(大分県竹田市)※写真と本文は無関係

【日経の記事】

緊急事態宣言が解除されたことで延期していた健診が徐々に再開される見通しだが、フル稼働は難しそうだ。

アンケートをまとめた聖隷健康診断センター(浜松市)の武藤繁貴所長は「新型コロナ前の水準に戻るのは少なくとも1~2年はかかるのではないか」とみる。特にビルに入居する健診施設は「3密(密閉・密集・密接)」を避けるのが難しく、新型コロナが終息するまでは受け入れ能力の6~7割に受診者を制限する必要があるという。

これにより関係者が危惧するのは「健診難民」が生まれることだ。NPO法人日本人間ドック健診協会(東京・千代田)の調査では「健診を先送りにすることで別の疾患での死亡率が上がるのではないか」と懸念する声が多くあがった。


◎「健診」は受けるべき?

『健診を先送りにすることで別の疾患での死亡率が上がるのではないか』と懸念する声が多くあがった」と聞くと「困ったことだ」と感じてしまう人が多いだろう。そう感じるのは、「健診」には「死亡率」を下げる効果があるとの前提がこの記事に潜んでいるからだ。しかし本当に「死亡率」を下げてくれるのだろうか。

2012年12月5日付の「BMJ誌から 一般的な健康診断に死亡率低減効果はない~14件の無作為化試験をメタ分析」という日経メディカルの記事では「一般成人を対象とした健康診断に、全死因死亡、心血管死亡、癌死亡を減らす効果は見られない――。そんなメタ分析の結果が、ノルウェー・コクランセンターのLasse T Krogsboll氏らによって2012年11月20日付のBMJ誌電子版に報告された」と記している。

健康診断に延命効果の『エビデンスなし』、本当に受けるべき検査とは」という今年4月13日付のダイヤモンドオンラインの記事でも「『健康診断には寿命を延ばす効果はない』ことを示すエビデンス(科学的根拠)がある──。健診を受けた人たちと受けなかった人たちを10年間にわたってフォローアップした結果、心筋梗塞や脳梗塞のような動脈硬化による病気の発生率、それに総死亡率のいずれにおいても、二つのグループに違いは認められなかった」と解説している。

こうした「分析」に関しては、批判や疑問も当然あるだろう。「健診」に「死亡率」を下げる効果があると思わせるような記事は書くなとは言わない。ただ、読者に情報を提供しているのだから、「死亡率」を下げる効果があるかどうかは執筆前にしっかり検討してほしい。今回の記事にはそれが感じられなかった。


※今回取り上げた記事「コロナで相次ぐ健診休止~疾患発見に黄信号 タニタは社員に体組成計
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200617&ng=DGKKZO60391450W0A610C2TJ1000


※記事の評価はC(平均的)

0 件のコメント:

コメントを投稿