福岡県久留米市の家屋 ※写真と本文は無関係です |
記事の冒頭から見ていこう。
【日経の記事】
この1カ月で、マネーの流れが「売り」から「買い」に一変した米国市場の商品が2つある。
1つは航空機大手、ボーイングの株式だ。新型コロナウイルスの拡散で旅客需要が激減、株価は3月、年初から73%安まで急落した。だがその後、トランプ大統領が支援を表明。米政府の景気対策にも事実上の支援策が盛り込まれて株価は底を入れた。
◎「買いに一変」?
記事に付けた「ボーイング」のグラフを見ると「株価は底を入れた」とは言えそうだ。しかし「マネーの流れが『売り』から『買い』に一変した」との説明は苦しい。「底入れはしたものの、その後は安値圏で一進一退」といったところではないか。
続きを見ていこう。
【日経の記事】
もうひとつは格付けが投機的等級の「ジャンク債」だ。3月は景気悪化による信用不安で売り込まれたが、4月9日に米連邦準備理事会(FRB)がまさかの購入を表明。価格上昇に弾みがついた。
これまでの投資の常識では片付かないことが起き始めた。株や社債への投資でも、企業だけでなく政府や中央銀行の出方を読み切らないと投資収益は稼げない。
◎「投資の常識」で片付くのでは?
「これまでの投資の常識では片付かないことが起き始めた」と大きく出ているが同意できない。「株や社債への投資」で「政府や中央銀行の出方」が影響を及ぼすのは当たり前だ。「政府や中央銀行の出方」は「株や社債への投資」に何ら影響を与えないというのが「投資の常識」だと信じてきたのならば、梶原氏は投資関連の記事を書く上で決定的に資質が欠けている。
さらに言えば、現状でも「政府や中央銀行の出方を読み切らないと投資収益は稼げない」とは思えない。株式のリターンが長期的にはプラスだとの前提で考えれば、「政府や中央銀行の出方」を全く読まずにインデックスファンドを購入して長期保有しても「投資収益は稼げ」るはずだ。
さらに続きを見ていく。
【日経の記事】
米国だけではない。コロナ危機対策で世界の政府が打ち出した財政刺激策は合計8兆ドル。世界の主な中央銀行も証券の購入でバランスシートを7兆ドルは拡大すると見られる。「ウイルスVS世界の政府・中銀」という構図が鮮明だ。
コロナは、企業経営者や投資家の心理を凍り付かせた。資本主義をマヒから救うには、政府が乗り出して火を付けるしかない。筆者が投資家なら、世界の政策通の助けを借りて各国の次の一手を読み、政策の恩恵を受ける資産を先回りして買うだろう。
実は「政策の先取り」という手法を教えてくれたのは、かつて「債券王(ボンド・キング)」と呼ばれて米債券投資会社のピムコを率いたビル・グロス氏だ。
2008年のリーマン危機の際、恐慌を避けるために米政府が支出を増やし始めるや公的資金で救われる企業の社債を買いあさって荒稼ぎした。「(危機に立ち向かう)政府の拳」。グロス氏は投資戦略をこう名付けた。
◎矛盾してない?
「ビル・グロス氏」が「リーマン危機の際」に「政策の先取り」で「荒稼ぎした」のであれば、「政府や中央銀行の出方」を読む投資手法は少なくとも10年以上前にはあったはずだ。なのになぜ「これまでの投資の常識では片付かないことが起き始めた」と言えるのか。
「政府や中央銀行の出方」を読む投資手法は以前から当たり前にある。そして、その手法に頼らなくても、おそらく「投資収益は稼げ」る。その辺り、梶原氏も本当は分かっているとは思うが…。
※今回取り上げた記事「Deep Insight~『政府の拳』は万能か」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200416&ng=DGKKZO58089810V10C20A4TCT000
※記事の評価はD(問題あり)。梶原誠氏への評価はE(大いに問題あり)を据え置く。梶原氏については以下の投稿も参照してほしい。
日経 梶原誠編集委員に感じる限界
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_14.html
読む方も辛い 日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post.html
日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」に見えるご都合主義
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_17.html
ネタに困って自己複製に走る日経 梶原誠編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_18.html
似た中身で3回?日経 梶原誠編集委員に残る流用疑惑
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_19.html
勝者なのに「善戦」? 日経 梶原誠編集委員「内向く世界」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_26.html
国防費は「歳入」の一部? 日経 梶原誠編集委員の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_23.html
「時価総額のGDP比」巡る日経 梶原誠氏の勘違い
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/gdp.html
日経 梶原誠氏「グローバル・ファーストへ」の問題点
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/blog-post_64.html
「米国は中国を弱小国と見ていた」と日経 梶原誠氏は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_67.html
日経 梶原誠氏「ロス米商務長官の今と昔」に感じる無意味
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/04/blog-post.html
ツッコミどころ多い日経 梶原誠氏の「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/deep-insight.html
低い韓国債利回りを日経 梶原誠氏は「謎」と言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_8.html
「地域独占」の銀行がある? 日経 梶原誠氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_18.html
日経 梶原誠氏「日本はジャンク債ゼロ」と訴える意味ある?
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_25.html
「バブル崩壊後の最高値27年ぶり更新」と誤った日経 梶原誠氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/27.html
地銀は「無理な投資」でまだ失敗してない? 日経 梶原誠氏の誤解
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/blog-post_56.html
「日産・ルノーの少数株主が納得」? 日経 梶原誠氏の奇妙な解説
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_13.html
「霞が関とのしがらみ」は東京限定? 日経 梶原誠氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/deep-insight.html
「儒教資本主義のワナ」が強引すぎる日経 梶原誠氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/deep-insight_19.html
梶原誠氏による最終回も問題あり 日経1面連載「コロナ危機との戦い」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/03/1.html
色々と気になる日経 梶原誠氏「Deep Insight~起業家・北里柴三郎に学ぶ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/04/deep-insight.html
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