2020年4月13日月曜日

「財政ファイナンスの副作用」に疑問残る週刊エコノミストの記事

週刊エコノミスト4月21日号に載った「独眼経眼~財政ファイナンスの効果と副作用」という記事には疑問が残った。ソニーフィナンシャルホールディングス・シニアエコノミストの渡辺浩志氏は「財政ファイナンスの副作用」について以下のように説明している。
耳納連山と菜の花(福岡県久留米市)
     ※写真と本文は無関係です

【エコノミストの記事】

米国では政府が2兆㌦の経済対策を表明すると、連邦準備制度理事会(FRB)は国債等の無制限買い入れを決定。これはもはや「財政ファイナンス(中銀による財政赤字の穴埋め)」だが、リーマン・ショック(2008年)をしのぐ危機に面し、悠長に財政規律を語っている余裕はなくなった。

中略)過去の量的緩和は流動性相場を生み、株価や原油価格をつり上げた。リーマン・ショック後、FRBは約6年かけて3・5兆㌦の量的緩和を行ったが、今回は各国中銀が数カ月間に7兆㌦もの現金を市中に投下する。桁外れの量的緩和が株価の急騰を招くだろう。

リスクは財政ファイナンスの副作用だ。紙幣を刷ってばらまけば、インフレや金利の急騰が起こる。現在は隔離政策による人工不況だが、財政ファイナンスは真性不況を招き得る。劇薬は効果も副作用も強いと覚悟しておくべきだ。


◎だったら日本は?

連邦準備制度理事会(FRB)は国債等の無制限買い入れを決定。これはもはや『財政ファイナンス(中銀による財政赤字の穴埋め)』」だとすると、日銀による異次元緩和も「財政ファイナンス」に当たると見てよいだろう。

紙幣を刷ってばらまけば、インフレや金利の急騰が起こる」という説明は教科書的には正しいのだろう。だが「だったら、なぜ日本では『インフレや金利の急騰』が問題となっていないのか」とは思う。そこは解説が欲しい。

現在は隔離政策による人工不況だが、財政ファイナンスは真性不況を招き得る」との説明も引っかかった。「隔離政策による人工不況」は「真性不況」に当たらないとの前提を感じるが、「隔離政策」による需要減退が深刻な景気後退を招けば、立派な「真性不況」ではないのか。

また、ウイルスを原因とする「不況」よりも「財政ファイナンス」を原因とする「不況」の方が「人工不況」と呼ぶに相応しい気がする。

ついでに記事の説明で引っかかった点を追加で指摘したい。

【エコノミストの記事】

世界の株価は約35%暴落した。大半は景気後退を織り込んだものだが、3月中旬以降の下落(約20%分)は、現金確保のための投げ売りであり、金融危機の発生を懸念した動きであったと見られる。それゆえ、各国が金融危機対策の荒業を見せると、株価は投げ売り前の水準に向けて急回復した。



◎「大半」と言える?

約35%暴落」のうち「約20%分」が「現金確保のための投げ売り」によるもので、残り15%分が「景気後退を織り込んだもの」らしい。つまり「景気後退を織り込んだもの」は半分に満たない。なのに「大半は景気後退を織り込んだもの」と言えるだろうか。


※今回取り上げた記事「独眼経眼~財政ファイナンスの効果と副作用
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200421/se1/00m/020/063000c


※記事の評価はC(平均的)。渡辺浩志氏への評価も暫定でCとする。

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