2020年4月9日木曜日

やはり苦しい「強化物」 日経「大王製紙、段ボール原紙輸出増」

日本経済新聞の企業ニュース記事でよく見られる「強化」物は総じて完成度が低い。7日の朝刊企業2面に載った「大王製紙、段ボール原紙輸出増~主力工場に200億円 装置刷新」という記事もそうだ。記事の全文を見た上で問題点を指摘したい。
筑後川沿いの菜の花(福岡県久留米市)
       ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

大王製紙は段ボール原紙の輸出を強化する。約200億円を投じて主力の三島工場(愛媛県四国中央市)の製造装置を刷新し、このほど商業運転を始めた。同工場での段ボール原紙の生産量は、従来より5割増の年間72万トンに増える見込み。ネット通販の拡大などを受け、中国や東南アジアなどで中長期的な成長が見込める段ボール向け市場の開拓を急ぐ。

三島工場は大王製紙の基幹拠点だ。これまで印刷・情報用紙を生産していた「抄紙機」と呼ぶ装置を段ボール原紙向けに改造した。製品は主に輸出に振り向ける

段ボールの需要はネット通販などの拡大を受けて国内外で成長が見込まれている。特に「中国や東南アジアでの需要は中長期的に伸びる」(大王製紙)。さらに中国は環境保全のため段ボール原紙の原料となる古紙の輸入を規制しており、製紙会社が供給する段ボール原紙の需要が高まっている。

足元では新型コロナウイルスの感染拡大で産業向けの段ボール需要などが落ち込む一方、「巣ごもり消費」の増加で食品や日用品の荷動きは堅調とみられる。

大王製紙は当面は一定の受注のめどが立ったと判断し、商業運転に踏み切った。

大王製紙の今回の取り組みは、洋紙の需要減少を受けた構造改革の一環でもある。日本製紙連合会(東京・中央)によると、2019年の印刷・情報用紙の出荷量は741万4千トンと前年比7.7%減った。このため19年10月に洋紙向けだった一部の抄紙機の稼働を止め、改造を続けてきた。今後は需要が見込める段ボール原紙の生産・輸出に本腰を入れる。


◎輸出はどのくらい増える?

大王製紙、段ボール原紙輸出増」と見出しで打ち出しているのだから、どのくらいの「輸出増」になるのかは記事の肝だ。しかし、そこが明確になっていない。

同工場での段ボール原紙の生産量は、従来より5割増の年間72万トンに増える見込み」と書いているので、年間の「生産量」は24万トン「増える」のだろう。「製品は主に輸出に振り向ける」のだから「輸出」は24万トン近く増やすと計算はできる。

だが「大王製紙、段ボール原紙輸出増」と打ち出すのであれば、「輸出」がどのくらい増えるかは明示してほしい。

さらに言えば、これまでどの程度の輸出実績があるのか分からないのも辛い。100万トンが124万トンになるのと、10万トンが34万トンになるのではインパクトがかなり違う。仮に輸出実績が分からないのならば、その点は記事に盛り込むべきだ。


※今回取り上げた記事「大王製紙、段ボール原紙輸出増~主力工場に200億円 装置刷新
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200407&ng=DGKKZO57717270W0A400C2TJ2000


※記事の評価はD(問題あり)

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