姪浜港(福岡市)※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
「なるほど、その手があったか」。3月上旬、短文投稿サイト、ツイッターである写真が話題をさらった。マスク売り場の値札に「1点目まで298円、2点目以降は9999円になります」と書かれている。ディスカウント店「ドン・キホーテ」での風景だ。
新型コロナウイルスの感染拡大が続き、マスクはすぐ品切れになってしまう。そこで価格設定を工夫して買い占めや転売目的の大量購入など「必要性の低い需要」を抑え、実際に利用したいひとにマスクが渡りやすくした。危機においても市場機能を生かす知恵。このツイートは約19万の「いいね」を集めた。
自由な取引のなかで価格が変動し、需要と供給が適切に調整されていく――。こんなふうに市場メカニズムが機能しないと、資本主義は本来の柔軟さを発揮できない。だが、新型コロナウイルスが欧米にも広がったショックから、世界の金融市場は2月下旬以降、異常な動きを繰り返した。
◎「市場機能」が大切と説くなら…
「自由な取引のなかで価格が変動し、需要と供給が適切に調整されていく――。こんなふうに市場メカニズムが機能しないと、資本主義は本来の柔軟さを発揮できない」と説くならば、そもそも「転売目的の大量購入」を否定すべきではない。
マスクの価値が1枚1万円なのに、ある場所では300円で売られていたら、大量に仕入れて市場価格で販売するのは合理的だ。いわゆる裁定取引だ。結果として市場価格を大幅に下回る商品は短時間で姿を消す。「需要と供給が適切に調整されていく」と言い換えてもいいだろう。「適切」をどう考えるかという問題は残るが…。
「1点目まで298円、2点目以降は9999円」という価格設定が「市場機能を生かす知恵」かどうかは脇に置いて「転売目的の大量購入」を防ぐ効果があるのかを考えてみたい。マスクの市場価値は1000円と仮定する。
この場合「2点目以降は9999円」には一定の防止効果があるが、それは「購入は1人1枚限り」と同じだ。「買い占め」を防ぐ効果では「1人1枚限り」が上回る。
「転売目的の大量購入」をきっちり防ぎたいのならば、「1点目」も1000円以上にすべきだ。「298円」で購入したマスクだと「転売」で利益を得る余地がある。
「ドン・キホーテ」のやり方は「なんで1枚だけなんだ。ウチはどうしても2枚必要なんだ」という客への対応としては効果があるだろう。しかし「市場機能を生かす知恵」といった類の話ではないと思える。
※今回取り上げた記事「コロナと資本主義(2)マネー暴走、未曽有の乱高下~危機が問う市場の賢さ」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200430&ng=DGKKZO57506400R00C20A4MM8000
※記事の評価はD(問題あり)
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