2019年3月11日月曜日

「セブン24時間営業」の解説が残念な日経 田中陽編集委員

日本経済新聞の田中陽編集委員が電子版に8日付で「ニュースこう読む~セブン『東大阪の乱』 正念場の24時間営業」という記事を書いている。この問題を取り上げた点は評価したいが、内容は残念だった。セブン本部寄りの姿勢を責めるつもりはない。しかし、結論が「イノベーションでどうにかなる」では、まともな解決策になっていない。まずはそのくだりを見ておこう。
名護屋城跡(佐賀県唐津市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

日本でコンビニが誕生して40年超。経済成長、人口増が見込めた時代からビジネスモデルの核となる24時間営業とそれを支えるフランチャイズ契約の根幹は変わっていない。

実験でも24時間営業は譲れない一線だろう。ただ、共同配送が革新的な取り組みであることを世間に納得してもらったように24時間営業の必要性をどれだけ世間とオーナーに納得させることができるのか。

セブンはこれまでも様々なイノベーションによって店舗運営を効率化すると同時に、消費者の支持を集めてきた。合成の誤謬を解きほぐすイノベーションをつくり上げることで「持続可能な社会」の一員に踏みとどまれるはずだ


◎せめて具体的な内容を…

5年後、10年後には「イノベーション」で問題を解決できるかもしれない。だが問われているのは、人手が足りなくても「24時間営業」を強いるべきかという足元の問題だ。加盟店寄りになって「選択制を認めてあげたら…」と書けば本部の機嫌を損ねる。だからと言って「契約通りに死ぬ気で24時間営業を続けるべきだ。それが嫌ならオーナー辞めるしかない」とも主張しづらい。そこで「イノベーション」を持ち出したのだろう。

イノベーション」で逃げるのならば、せめてどんな「イノベーション」が期待できるのか具体的に記してほしかった。完全に店員の代わりができるロボットなのか。そこに触れれば「イノベーション」に期待するという結論がいかに現実離れしているか浮かび上がってしまう。それは田中編集委員も分かっているのだろうが…。

記事には、この問題に関する田中編集委員の認識不足を感じさせる記述もあった。それに関しては以下の内容で日経に問い合わせを送っている。


【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 編集委員 田中陽様

8日付で電子版に載った「ニュースこう読む~セブン『東大阪の乱』 正念場の24時間営業」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

<記事の引用>

セブンが今回の東大阪の乱について神経をとがらせているのは「アリの一穴」になりかねないとみているからだろう。それはコンビニがフランチャイズビジネスであることが背景にある。

小売業や飲食業のフランチャイズビジネスは同じ看板を掲げる以上、営業時間や品ぞろえ、サービスは統一しないとブランドの維持は難しくなる。だから個々のオーナーとの契約は例外を極力つくらないようにする。

同社は加盟店に対して一糸乱れぬ店舗運営を求める。例外をつくれば、本部とすべての加盟店との対等の関係が崩れるからだ。

「あの店のフランチャイズ契約とうちの契約が違うのは、どういうことか」と不満が出るのは明白だ。だからセブンにしてみたら例外を設けるのには消極的で、24時間営業は死守しないといけない。

--引用は以上です。

これを読むとセブンイレブンで「24時間営業」を免除されている加盟店はないと理解したくなります。しかし「セブン&アイ、小田急駅構内にコンビニ出店 提携後初」という2018年10月1日付の日経の記事によると「セブン―イレブン小田急マルシェ新宿店」の営業時間は「午前6時30分~午後11時」です。日経は提携時に「(小田急は)駅構内売店やコンビニはセブン―イレブンのフランチャイズ店舗に転換していく」とも報じています。

だとすれば「アリの一穴」は既に開いているのではありませんか。「同社は加盟店に対して一糸乱れぬ店舗運営を求める。例外をつくれば、本部とすべての加盟店との対等の関係が崩れるからだ」と田中様は解説していますが、「小田急」に「24時間営業」を「死守」させていますか。

同社は加盟店に対して一糸乱れぬ店舗運営を求める。例外をつくれば、本部とすべての加盟店との対等の関係が崩れるからだ」といった説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社の一員として、責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「ニュースこう読む~セブン『東大阪の乱』 正念場の24時間営業
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42144630X00C19A3X12000/


※記事の評価はD(問題あり)。田中陽編集委員への評価はDを据え置く。田中編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「小売りの輪」の説明が苦しい日経 田中陽編集委員「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html

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