2019年2月7日木曜日

「英国の地続き国境」問題 朝日と日経どっちが正しい?

アイルランド島にある英領北アイルランドとアイルランドの国境は、島国の英国にとって唯一の地続きの国境だ」という説明は正しいか。こんな問題があったら、どう答えるだろうか。自分ならば「誤り」を選ぶ。英領ジブラルタルがあるからだ。しかし、日本経済新聞の中島裕介記者は違う考えのようだ。中島記者だけではない。日経の多くの記事で似たような記述がある。
白池地獄(大分県別府市)※写真と本文は無関係です

一方、朝日新聞はジブラルタルを「スペインと地続き」の「英国の領土」とみているようだ。日経の説明で問題ないのか。それとも自分や朝日が正しいのか。以下の内容で日経に問い合わせを送っている。

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 中島裕介様 国際アジア部 担当デスク様

7日の朝刊総合1面に載った「真相深層~英国境問題、再燃の危機 EU離脱で開いたパンドラの箱」という記事についてお尋ねします。記事には「アイルランド島にある英領北アイルランドとアイルランドの国境は、島国の英国にとって唯一の地続きの国境だ」との記述があります。しかし英領ジブラルタルにも「地続きの国境」があります。

スペイン、英離脱協定案に不満」という2018年11月25日付の日経の記事では「スペインのサンチェス首相は23日、英国と欧州連合(EU)が大筋合意した離脱協定案について、隣接する英領ジブラルタルの扱いを理由に不満を示した」と報じています。この記事を信じれば、「英領ジブラルタル」は「スペイン」と「隣接」しています。地図で見る限り、川や湖が「スペイン」と「英領ジブラルタル」を隔てているとも思えません。

ちなみに「スペインと地続き、英国の領土って? EU離脱を考える」(2018年9月14日付)という朝日新聞の記事では「英国が欧州連合(EU)加盟国と地続きなのは、英領北アイルランドとここ(=ジブラルタル)だけである」と記しています。

真相深層」での「英領北アイルランドとアイルランドの国境は、島国の英国にとって唯一の地続きの国境だ」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社として、責任ある行動を心掛けてください。

2018年11月15日付の「北アイルランド、陸続きの国境 関税同盟の扱い、火種に」という日経の記事でも「島国の英国にとって、アイルランドは唯一の地続きのEU加盟国」と書いており、御紙はこれまでも似たような説明を繰り返しています。朝日と日経、この件で正しい説明をしているのはどちらなのか。じっくり検討してください。

せっかくの機会なので、もう1つ記事の問題点を指摘しておきます。

70年代以降、アイルランド統一をめざすカトリック系とプロテスタント系が武力衝突を繰り返した」と中島様は説明しています。この書き方だと「カトリック系とプロテスタント系」の両方が「アイルランド統一をめざす」とも取れます。

また朝日を出して恐縮ですが、朝日は「北アイルランド紛争」に関して「英国に残った北アイルランドでは、英国からの分離とアイルランドへの併合を求める少数派のカトリック系住民と、英国の統治を望む多数派のプロテスタント系住民が対立した」と記しています。「真相深層」でも「アイルランド統一をめざすカトリック系と、英国統治を望むプロテスタント系が~」などと書いた方が良いでしょう。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。

※「真相深層~英国境問題、再燃の危機 EU離脱で開いたパンドラの箱
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190207&ng=DGKKZO40973060W9A200C1EA1000


※記事の評価はD(問題あり)。中島裕介記者への評価も暫定でDとする。

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