2019年2月16日土曜日

「人事は原則、発表を待て!」 日経の高島屋 社長人事報道に思うこと

「まだ、こんなことやってるのか。社長人事は原則として発表を待つべきなのに…」--。高島屋の社長人事に関する日本経済新聞の報道を見てそう感じた。
日本橋高島屋S.C.(東京都中央区)

日経は15日夕刊4版総合面に「高島屋社長に村田常務が昇格 内外の重点事業にメド」という記事を突っ込んでいる(つまり1版と3版には入れていない)。そして16日の朝刊企業面には「高島屋、グループと連携強化 社長に村田常務」という記事を載せた。

朝刊の記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

高島屋は15日、村田善郎常務(57)が3月1日付で社長に昇格する人事を正式発表した。木本茂社長(62)は子会社で不動産開発を手掛ける東神開発(東京・世田谷)の会長に転じ、鈴木弘治会長(73)は留任する。同日都内で開いた記者会見で村田氏は、「(新たな)ビジネスモデルを作るのが大きな課題」と決意を述べた。

高島屋は2016年にベトナム、18年にタイに出店し、日本橋店(東京・中央)の新館を完成させた。このタイミングでの交代について木本氏は「在任5年で刺激のあるプロジェクトを立ち上げられたことで区切りがついた」と説明。村田氏を選んだことについては「経営企画などを経験しておりリーダーシップを発揮してくれる」とした。

村田氏は労働組合の委員長を務め、海外店舗立ち上げにもかかわった。国内百貨店を取り巻く環境は厳しいが、「(行政などと進める)まちづくり戦略を推進するため東神開発との相乗効果を高める」と強調。グループ会社との連携を強化して、新たなビジネスモデルを作り上げる考えだ。

14年まで11年社長を務めた鈴木氏は、会長として経営を監督する立場を継続する。木本氏は東神開発の会長を鈴木氏から引き継ぎ、高島屋がグループ戦略上重視する商業施設開発や街づくりを担う。



◎「鈴木氏の長期政権」をなぜ論じない

そこそこ行数がある記事なのに「鈴木弘治会長(73)は留任する」「14年まで11年社長を務めた鈴木氏は、会長として経営を監督する立場を継続する」と会長留任に関してはサラッと触れているだけだ。

鈴木弘治会長」が高島屋の最高権力者なのは衆目の一致するところだろう。今回の人事で最も重要なのは「鈴木弘治会長」が「留任する」点だと思える。長期政権を築いた末に逮捕されたゴーン被告に関して日経は「独裁者に変貌」「いつしか暴君と恐れられる存在に」などと事件発覚後に解説し、長期政権の危険性を訴えていた。なのに、なぜ「鈴木弘治会長」の問題を論じないのか。

夕刊4版に記事を入れられたのが「鈴木氏」からの情報提供のおかげかどうかは分からない。だが、その可能性は十分にある。人事取材でお世話になってしまえば、仮に「鈴木氏は暴君だ」と記者が感じていても、それを記事に反映させるのは難しくなる。

そもそも夕刊4版に記事を入れる意味が乏しい。まず4版読者は日経読者の一部に過ぎない。自分は夕刊3版地域に住んでいるので、4版に記事を入れてもらっても関係ない。それに、高島屋は今回の人事を15日の午後には発表している。4版読者も夕刊が自宅に届くころには、人事をネットでも確認できる。

関係者に取材して夕刊4版に入れるために担当記者はかなりの労力を使ったはずだ。なのに読者に及ぶプラスはわずかだ。一方で、取材で協力してくれた人に恩ができるために報道内容の制約を受けるというマイナスが生じてしまう。

結局、メリットよりもデメリットがはるかに上回る。上記の記事に関しても、一読者の立場で言えば「実質ナンバー2の交代を夕刊に入れるなんてどうでもいい。それより鈴木氏が長くトップに立つことのマイナス面はどうなのか。これを機にしっかり検証してほしかった」と思う。

なので改めて訴えたい。不祥事関連など特殊な場合を除いて社長人事は発表待ちでいい。そんな取材に時間を割く暇があるならば、読書でもして書き手としての実力を高めてほしい。

記者にしてみれば「そんなこと言われても会社の方針だから…」となるだろう。それは分かる。問題は編集局の幹部だ。「自分たちの記者時代は朝夕刊の最終版に特ダネを入れることに全力を注いできた。それを無駄だと言うのか」との思いはあるだろう。だが、社長人事を発表前に報じることに社会的意義はほぼない。読者ニーズも極めて小さいだろう。一方で報道内容が縛られるリスクは大きい。そして記者は無駄に疲弊する。

合理的に判断すれば、どの道を選ぶのが正しいのか。過去を断ち切って考えてほしい。


※今回取り上げた記事「高島屋社長に村田常務が昇格 内外の重点事業にメド
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190216&ng=DGKKZO41329010V10C19A2TJC000


※記事の評価はC(平均的)。

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