2019年2月6日水曜日

「牛丼大手の収益明暗」に感じる日経 亀井亜莉紗記者の未熟さ

6日の日本経済新聞朝刊企業1面に載った「牛丼大手の収益明暗~ゼンショー、季節商品好評 吉野家、セルフ化で遅れ」という記事は、厳しく言えば「まともな説明」ができていない。記事の全文を見た上で具体的に指摘したい。
別府海浜砂湯(大分県別府市)
       ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

牛丼大手3社の収益の明暗が分かれている。「すき家」を展開するゼンショーホールディングスは5日、2018年4~12月期が営業増益になったと発表した。一方、松屋フーズホールディングスは同営業減益、吉野家ホールディングスの18年3~11月期営業損益は9年ぶりの赤字だった。人件費や原材料費が高騰する中、顧客満足度や値上げ力、業務の効率性という3要素を満たしているかどうかで収益力に差が付いた。

 ゼンショーHDの18年4~12月期の連結営業利益は、前年同期比7%増の146億円だった。

同社はすき家でほぼ毎月、「お好み牛玉丼」など季節限定の商品を投入する。値段は500円と定番の並盛り(350円)より4割以上高いが、目新しいメニューが好評で昨年8月以降は既存店客数が増え続けており、顧客満足度が高い。

一方、吉野家HDは季節商品の展開時期を見誤った。人気の大型メニューである「牛すき鍋膳」の投入が11月1日からと例年より遅くなった。

値上げの巧拙でも明暗が分かれた。松屋フーズとゼンショーHDの2社は18年4月までに定番メニューで値上げしており、今期の材料高や人件費の負担増を補っている。吉野家HDは、14年の値上げで客離れを招いた苦い経験から、足元のコスト高にもかかわらず価格改定を見送った。

業務の効率性でも差がある。松屋フーズはセルフサービス店を増やし、売上高に占める人件費の割合を引き下げた。ゼンショーHDは需要予測の精度を高めたことで食材ロスが減少している。吉野家HDはセルフ店への改装が20店程度にとどまり、現時点では業績への貢献は低いとみられる。

外食業界は消費者の節約志向にも左右されやすい。ゼンショーHD、松屋フーズも足元は好調でも事業環境が急変するリスクはつきまとう。高い顧客満足度に裏付けられた値上げ力や業務効率化に終わりはない。


◎松屋フーズは好調組?

牛丼大手3社の収益の明暗が分かれている」と冒頭で打ち出し、「ゼンショーホールディングスは5日、2018年4~12月期が営業増益になったと発表」「一方、松屋フーズホールディングスは同営業減益、吉野家ホールディングスの18年3~11月期営業損益は9年ぶりの赤字」と書いている。ならば「」が「ゼンショーHD」で、「」が「松屋フーズ」と「吉野家HD」のはずだ。しかし、この後の分析で筆者の亀井亜莉紗記者は「松屋フーズ」を「」に入れている。

値上げの巧拙でも明暗が分かれた。松屋フーズとゼンショーHDの2社は18年4月までに定番メニューで値上げしており、今期の材料高や人件費の負担増を補っている」との記述からは「松屋フーズ」がうまく「値上げ」をしてきたと読み取れる。「松屋フーズはセルフサービス店を増やし、売上高に占める人件費の割合を引き下げた」「松屋フーズも足元は好調」といった説明も、「松屋フーズ」が「」に入ると示している。

どうしても「松屋フーズ」を「」として描きたいのならば、営業利益を用いてはダメだ。仮に経常利益で「ゼンショーHD」と「松屋フーズ」が増益、「吉野家HD」が減益ならば、経常利益を前面に出せばいい。適当なものがない場合、「松屋フーズ」を「」に入れるのは諦めるべきだ。

ついでに言うと、外食や小売りの業績関連記事を書く時には、既存店売上高の増減率をなるべく入れた方がいい。店舗の競争力を示す重要な指標だからだ。今回の記事では「ゼンショーHD」に関して「昨年8月以降は既存店客数が増え続けており」とは書いているが、既存店売上高は全く出てこない。

牛丼大手3社の収益の明暗が分かれている」のであれば、既存店売上高の増減でどの程度「明暗が分かれている」のかは知りたくなる。

最後の段落の「外食業界は消費者の節約志向にも左右されやすい。ゼンショーHD、松屋フーズも足元は好調でも事業環境が急変するリスクはつきまとう。高い顧客満足度に裏付けられた値上げ力や業務効率化に終わりはない」という説明はなくてもいい。当たり前のことを書いているだけだ。ここを削って、より重要な情報を盛り込んでほしかった。

記事から判断すると、亀井記者は業績関連記事を書くための十分な実力をまだ身に付けていないのだろう。若手記者ならば仕方のない面もある。問題は担当デスクだ。今回の記事を読んで「まともな分析記事になってないな」と気付かなかったのならば、記者時代もきちんとした分析記事は書けていないと思える。


※今回取り上げた記事「牛丼大手の収益明暗~ゼンショー、季節商品好評 吉野家、セルフ化で遅れ
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190206&ng=DGKKZO40943810V00C19A2TJ1000


※記事の評価はD(問題あり)。亀井亜莉紗記者への評価も暫定でDとする。

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