2019年2月18日月曜日

「日の丸半導体」の敗因分析が雑な日経 西條都夫編集委員

18日の日本経済新聞朝刊企業面に載った「経営の視点~平成日本 失速の研究 日の丸半導体 4つの敗因」という記事で西條都夫編集委員が雑な分析を披露している。「日の丸半導体」の「敗因」として「総合電機の一部門」だったことが「足かせ」になったと西條編集委員は言う。この分析に説得力はあるだろうか。記事の前半部分を見てみよう。
八坂川(大分県杵築市)※写真と本文は無関係

【日経の記事】

「逃がした魚は大きい」というが、平成の日本にとって逃した魚の代表は半導体だろう。米ICインサイツによると、1990年(平成2年)に日本勢の世界シェアは49%に達したが、2017年には7%まで落ち込んだ。米ガートナーが毎年発表する世界の半導体上位10社からも18年には日本企業が姿を消した。

半導体の重要性は言うまでもない。平成の初めに世界市場は約500億ドルだったが、18年は10倍近い4779億ドル(世界半導体市場統計)に伸びた。英エコノミスト誌は「データが21世紀の石油なら、それを有効活用するための半導体は内燃機関に相当する」とデジタル社会の中核技術に位置づけた。民生だけでなく国防でも戦略性は高く、米国が半導体技術の中国への流出に神経質になるのも故ないことではない。

なぜこれほど重要な領域で日本は敗戦を喫したのか。識者に取材し、4つの敗因をまとめてみた。

一つは「組織と戦略の不適合」だ。日本の有力半導体企業のほとんどは総合電機の一部門として出発した。当初はそれが一種の事業ふ化装置としてうまく機能したが、ビジネスが大きくなり、迅速で思い切った決断が必要になると、とたんに足かせに転じた

ベテランアナリストで、今は日立製作所の社外取締役を務める山本高稔氏は「雑多な事業を寄せ集めたコングロマリットの経営速度では通用しなかった。投資決断が常に何歩か遅れ、規模も小さく、競争からはじき飛ばされた」。



◎だったらサムスンは?

総合電機の一部門」だったために「迅速で思い切った決断が必要になると、とたんに足かせに転じた」と西條編集委員は解説する。しかし「米ガートナーが毎年発表する世界の半導体上位10社」でトップのサムスン電子も半導体は「総合電機の一部門」だ。

東芝メモリを売却した影響で「上位10社」からは外れたようだが、東芝も「総合電機の一部門」で半導体を手掛けて稼ぎ頭に育てた。「雑多な事業を寄せ集めたコングロマリットの経営速度では通用しなかった」のであれば、サムスンも東芝も敗れ去っているはずだ。

サムスンが「総合電機」として半導体事業を成功させていることを西條編集委員は知らないのか。だとすれば「日の丸半導体」の「敗因」を分析する資格はない。知っているのにあえて無視したのならば手抜きが過ぎる。

ついでに記事の書き方で西條編集委員に2つ助言したい。

(1)二重否定は避けよう

日経は社内で「二重否定は使わない」と定めているはずだ。絶対に使うなとは言わないが「米国が半導体技術の中国への流出に神経質になるのも故ないことではない」というくだりで二重否定を使う必要性は感じられない。「米国が半導体技術の中国への流出に神経質になるのも当然だ」などとしても問題は生じない。大したことを書いているわけでもないので、説明は簡潔にしてほしい。


(2)主語と述語を考えよう

ベテランアナリストで、今は日立製作所の社外取締役を務める山本高稔氏は『雑多な事業を寄せ集めたコングロマリットの経営速度では通用しなかった。投資決断が常に何歩か遅れ、規模も小さく、競争からはじき飛ばされた』」と西條編集委員は書いている。

この場合、主語の「山本高稔氏」を受ける述語が見当たらない。「山本高稔氏は競争からはじき飛ばされた」では意味が通じない。「山本高稔氏は『……』とみている」などとしないと成立しない。

例えば「イチローは『開幕戦で結果を残せなかったら引退する』」といった書き方ならば、コメントで文が終わっていても主語と述語の関係に問題は生じない。しかし、「山本高稔氏」のくだりはそうではない。

この手の助言をベテランの編集委員にしなければならないのが日経の辛いところだ。記者教育が不十分な上に、「きちんとした記事を書ける人だけが編集委員になれる」という仕組みにもなっていない。 西條編集委員だけの問題ではない。


※今回取り上げた記事「経営の視点~平成日本 失速の研究 日の丸半導体 4つの敗因
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190218&ng=DGKKZO41242510T10C19A2TJC000


※記事の評価はD(問題あり)。西條都夫編集委員への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。西條編集委員については以下の投稿も参照してほしい。

春秋航空日本は第三極にあらず?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/04/blog-post_25.html

7回出てくる接続助詞「が」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/04/blog-post_90.html

日経 西條都夫編集委員「日本企業の短期主義」の欠陥
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_82.html

何も言っていないに等しい日経 西條都夫編集委員の解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_26.html

日経 西條都夫編集委員が見習うべき志田富雄氏の記事
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_28.html

タクシー初の値下げ? 日経 西條都夫編集委員の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/04/blog-post_17.html

日経「一目均衡」で 西條都夫編集委員が忘れていること
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_14.html

「まじめにコツコツだけ」?日経 西條都夫編集委員の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/07/blog-post_4.html

さらに苦しい日経 西條都夫編集委員の「内向く世界(4)」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2016/11/blog-post_29.html

「根拠なき『民』への不信」に根拠欠く日経 西條都夫編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_73.html

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