九州北部豪雨後の福岡県朝倉市 ※写真と本文は無関係です |
【文藝春秋の記事】
そもそもJDIは12年の設立以来、一度もフリーキャッシュフローが黒字になったことがない。投資キャッシュフローの赤字が営業キャッシュフローを常に上回っている。つまり「一度も投資の元を取れていない」のだ。
◎「投資の元」とは切り離して考えた方が…
「投資の元」を取るとはどういうことだろう。100億円を投資して工場を建てた場合、その工場から100億円以上のリターンが得られたら「投資の元」が取れたと言えそうだ。だが、これは1年間の話ではない。
記事の説明だと「フリーキャッシュフローが黒字=投資の元が取れた」と解釈できる。だが、そうとも言えない。新会社で100億円を投資して工場を建て、その工場が翌期に10億円の営業キャッシュフローの黒字を生み出してくれるとしよう。投資は前の期にやったので翌期はゼロとする。
この場合、翌期に10億円のフリーキャッシュフローが生まれる。だからと言って「投資の元が取れた」訳ではない。100億円の投資に対して10億円のリターンが得られただけで、投資回収率はまだ10%に過ぎない。
JR日田彦山線の石原町駅(北九州市) ※写真と本文は無関係です |
また、設立以来ずっとフリーキャッシュフローがマイナスだとしても「一度も投資の元を取れていない」とも言い切れない。個別の投資案件では資金を回収できているのに、新規の投資が続くために会社全体ではフリーキャッシュフローのマイナスが続くこともあり得る。
年間のフリーキャッシュフローを見て「プラスだから投資の元が取れた」「マイナスだから投資の元が取れていない」と考えるのは、基本的に間違っている。「投資の元」が取れているかどうかは、案件ごとに見ていく必要がある。
とは言え、資金繰りの面からは「一度もフリーキャッシュフローが黒字になったことがない」のは好ましい話ではない。だとしたら以下のように書いてはどうか。
【改善案】
そもそもJDIは12年の設立以来、一度もフリーキャッシュフローがプラスになったことがない。投資キャッシュフローの赤字が営業キャッシュフローの黒字を常に上回っている。つまり、一度も投資資金をその期の稼ぎで賄えていない。
◇ ◇ ◇
※今回取り上げた記事
「深層リポート~産業革新機構がJDI(ジャパンディスプレイ)を壊滅させた」
※今回の記事に関しては以下の投稿も参照してほしい。
文藝春秋「産業革新機構がJDIを壊滅させた」 大西康之氏への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_10.html
※記事の評価はD(問題あり)。大西康之氏への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。大西氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。
日経ビジネス 大西康之編集委員 F評価の理由
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_49.html
大西康之編集委員が誤解する「ホンダの英語公用化」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_71.html
東芝批判の資格ある? 日経ビジネス 大西康之編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_74.html
日経ビジネス大西康之編集委員「ニュースを突く」に見える矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/01/blog-post_31.html
FACTAに問う「ミス放置」元日経編集委員 大西康之氏起用
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/facta_28.html
文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」が空疎すぎる大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_10.html
文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」 大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_12.html
文藝春秋「東芝 倒産までのシナリオ」に見える大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/blog-post_74.html
大西康之氏の分析力に難あり FACTA「時間切れ 東芝倒産」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/facta.html
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