ヒシャゴ浦・姉妹岩(大分市) ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
金融庁は外国為替証拠金取引(FX)の証拠金倍率(レバレッジ)を引き下げる検討に入った。現行の最大25倍から10倍程度に下げる案が有力。外国為替相場が急変動した際、個人投資家や金融機関が想定を超える損失を抱えるリスクが高まっていると判断した。国内取引高は約5千兆円に上る。規制見直しで日本発の市場混乱を防ぐ。
◎最近になって「リスク」上昇?
なぜ今「レバレッジを引き下げる検討に入った」のか、よく分からない。記事では「外国為替相場が急変動した際、個人投資家や金融機関が想定を超える損失を抱えるリスクが高まっている」ことを理由に挙げている。しかし、以前に比べて「リスクが高まっている」感じはしない。「相場が急変動」した時のリスクがここに来て「高まっている」と言える根拠は示してほしかった。
続いては、言葉の使い方に一言。
【日経の記事】
金融庁はFXの業界団体、金融先物取引業協会と規制見直しに向け協議を開始。早ければ来年にも内閣府令を改正して実施する可能性がある。
◎不要な「可能性がある」
上記の「可能性がある」は省いていい。冒頭で「検討に入った」と書いているのだから、決定事項でないのは自明だ。「早ければ来年にも内閣府令を改正して実施する」で何の問題もない。無駄な言葉は省いて簡潔に記事を書いてほしい。
次に、この記事で最も気になった記述を見てみよう。
【日経の記事】
個人投資家は現在、手元資金の25倍までの範囲で取引できる。手元に4万円の証拠金があれば、100万円まで取引できる計算だ。レバレッジを10倍にすると、必要な証拠金は10万円になる。金融庁は過去の為替相場から、変動率がどんなに大きくなっても元本がなくならないようにする方針で、現在は「10倍程度」が妥当とみている。
◎「元本がなくならない」?
まずは細かい問題から。「手元に4万円の証拠金があれば」という表現は引っかかる。証拠金は業者に預けてしまうので「手元に」ある感じはしない。「4万円の証拠金を用意できれば、100万円まで取引できる計算だ」などとした方が適切ではないか。
豪雨被害を受けた福岡県朝倉市 ※写真と本文は無関係です |
さらに言うと、ここでは「元本=証拠金」という意味で使っているようだが、誤解を招きやすい気がする。間違いとは言わない。ただ、「元本=想定元本」との解釈もできる。記事の例では「100万円」に当たる。「元本がなくならない」については、「証拠金がなくならない」で十分ではないか。
最後に、最も気になった「変動率がどんなに大きくなっても元本がなくならない」件を考えたい。レバレッジ「10倍程度」で「変動率がどんなに大きくなっても元本がなくならないよう」にできるとは考えにくい。10%の価格変動で「元本(証拠金)」が全てなくなる計算だ。為替市場で10%を超える価格変動は容易に起こり得る。
金融庁が言う「変動率がどんなに大きくなっても元本がなくならない」とは、「1日の間で」といった条件が付くのではないか。これならまだ分かる。記事を素直に読むと「レバレッジ10倍ならば、長期で取引しても証拠金を全て失うような事態は起きない」と感じてしまう。
仮に「変動率がどんなに大きくなっても」と言うのが「1日の間」だとしても、レバレッジ「10倍程度」で「元本がなくならないよう」にできるかも、やや怪しい。英国のEU離脱決定を受けた2016年6月24日の記事では、日経自身が「対ポンドに至っては早朝に1ポンド=160円ほどのレートが135円と数時間のうちに2割近く急騰」と書いている。これだと、10倍のレバレッジでも証拠金が吹き飛んでしまう可能性は十分にある。
金融庁が調べた「過去の為替相場」とは「過去のドル円相場」なのかもしれないが、FXはドル円だけが対象ではない。
※今回取り上げた記事「FX倍率、上限下げへ 現行25倍→10倍に 金融庁検討、来年にも」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170928&ng=DGKKASDF27H0R_X20C17A9MM8000
※記事の評価はD(問題あり)。
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