豪雨被害を受けた福岡県朝倉市 ※写真と本文は無関係です |
問題のくだりを見てみよう。
【日経の記事】
そもそも2%目標は白川方明前総裁時代の13年1月に示したもの。黒田東彦総裁率いる今の日銀がそれに期限を設けたのは、デフレ早期克服への強い決意表明で人々のインフレ期待を刺激し、物価に上げ圧力を加えるためだった。だがうまくいかないことがわかった。長年の物価下落により人々の間に根付いた強固なデフレ心理は、簡単には解消されなかったのだ。2年の期限を示してもあまり意味がなくなったので取り下げた。
◎「強固なデフレ心理」がある?
「人々の間に根付いた強固なデフレ心理」という表現から清水編集委員のある種の思考停止を感じてしまう。
日銀の「生活者意識アンケート調査」(2017年6月)によると「1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うか」という質問に対する回答の中央値は2.0%だ。1年後の物価見通しでは「かなり上がる」「少し上がる」が計75.4%。一方、「かなり下がる」「少し下がる」は合わせても2.4%に過ぎない。ここから「人々の間に根付いた強固なデフレ心理」を読み取れるだろうか。
「長年の物価下落」で「人々の間に根付いた強固なデフレ心理」が根付くというのは、何となくそれらしいが、実際には90年代以降に大した物価下落は起きていない。それは消費者物価指数(CPI)の推移を見れば分かる。デフレ傾向の時期でも下落率はわずかで「ほぼ横ばい」だ。そうした状況で「強固なデフレ心理」が根付くと考える方がどうかしている。
人々の期待インフレ率が2%程度だとすると、「人々の間に根付いた強固なデフレ心理は、簡単には解消されなかった」から2%の物価目標に届かなかったと考えるのも問題がある。むしろ「人々は2%程度のインフレ期待を有しているのに、なぜ物価上昇率はそれを下回ったままなのか」と考察すべきだ。
※今回取り上げた記事「マネー底流潮流~2年より2%選んだ日銀」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170919&ng=DGKKZO21252440Z10C17A9ENK000
※記事の評価はC(平均的)。清水功哉編集委員への評価もCを据え置くが、やや弱含みと言える。清水編集委員は以前にも似たような問題を抱えた記事を書いている。その件では以下の投稿を参照してほしい。
企業にデフレ心理? 日経 清水功哉編集委員への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_28.html
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