2017年6月6日火曜日

日経1面「市場の力学~ゆがむ秩序(上)」に感じた誤り

6日の日本経済新聞朝刊1面に載った「市場の力学ゆがむ秩序(上) 読めぬ世界 惑う投資家 マネー滞留 危うい株高」という記事はいくつか引っかかる点があった。その1つが「格付けが高い先進国の長期国債で2%以上あるのは米国くらいだ」という部分だ。どうも違う気がするので、日経に問い合わせてみた。その内容は以下の通り。
小倉駅(北九州市)※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

朝刊1面の「市場の力学ゆがむ秩序(上)」という記事についてお尋ねします。この記事には「株式よりリスクが低く、利回りが年2~3%の運用先があればいいのに、それがない。格付けが高い先進国の長期国債で2%以上あるのは米国くらいだ」との記述があります。しかし「格付けが高い先進国の長期国債で2%以上あるのは米国くらいだ」とは思えません。

例えば、格付けAAAであるオーストラリアの国債利回りは2.4%程度、同じくAAAのニュージーランドも2.7%程度です(格付けはS&P、利回りは10年債)。両国とも「格付けが高い先進国」ですが、「長期国債で2%以上」を確保しています。先進国に入れてよいか微妙ですが、シンガポールもAAAで国債利回り2%を上回っています。

「格付けが高い先進国の長期国債で2%以上あるのは米国くらいだ」との説明は誤りだと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。クオリティージャーナリズムを標榜する新聞社として責任ある行動を心掛けてください。

付け加えると「株式よりリスクが低く、利回りが年2~3%の運用先があればいいのに、それがない」との説明も苦しいと思えます。例えば、韓国は格付けAAで国債利回り2.1%程度です。AA格の国債への投資リスクが株式を上回るとは思えません。よほどの低格付けでない限り、国債は株式より低リスクでしょう。そして「利回りが年2~3%の運用先」は米国債以外にもかなりあります。

◇   ◇   ◇

日経からの回答はないだろう。


※今回取り上げた記事「市場の力学~ゆがむ秩序(上) 読めぬ世界 惑う投資家 マネー滞留 危うい株高
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170606&ng=DGKKZO17341520W7A600C1MM8000


※今回の連載に関しては以下の投稿も参照してほしい。

問題多い日経1面「市場の力学~ゆがむ秩序(上)」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/blog-post_7.html


1930年は世界恐慌翌年? 日経「市場の力学(下)」の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/1930.html


「保護主義の波」に無理あり 日経「市場の力学(下)」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/blog-post_9.html

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