2017年6月27日火曜日

荒木宏香記者も業界寄り? 週刊エコノミスト「やるなら肉食系投信」

週刊エコノミストの荒木宏香記者も金融業界の関係者にうまく丸め込まれてしまったのだろうか。7月4日号の特集「やるなら肉食系投信」を読む限りでは、その可能性が高そうだ。この特集ではアクティブ投信を薦めているが、説明には色々と問題がある。まずは荒木記者が書いた「過去10年の好成績投信 中小型株運用が上位に」という記事の一部を見てみよう。
甲佐神社(熊本県甲佐町)※写真と本文は無関係です

【エコノミストの記事】

世界中でインデックス投信に資金が流入し、その存在感を増すなか、アクティブ投信の存在は埋もれがちだ。その理由は何と言っても、アクティブ投信の多さにある。

投資信託協会によると、日本の公募株式投信(追加型、随時購入可能)5038本のうち、インデックス投信は623本なのに対して、アクティブ投信は4415本にものぼる(2017年3月末時点)。4400本以上に達する投信の中から投資初心者が最適な商品を選び出すのは容易ではない。


◎なぜ「コストの違い」を無視?

一般的に言えば、インデックス投信の最大の長所はコストの低さだ。信託報酬が低い分、運用成績でアクティブ投信を上回りやすい。荒木記者はその点になぜ触れないのか。知らないのならば知識不足が過ぎるし、あえて触れないのならばアクティブ投信を売り込みたい人たちの利益代弁者と言うほかない。


◎なぜ「日本」の数字?

世界中でインデックス投信に資金が流入し、その存在感を増すなか、アクティブ投信の存在は埋もれがち」な理由を説明するのに、日本の投信の数を使われても困る。「その理由は何と言っても、アクティブ投信の多さにある」と解説するのであれば、世界的に見てアクティブ投信の数が多いと言えるデータを使うべきだ。


◎どちらも十分「多い」ような…

4400本以上に達する投信の中から投資初心者が最適な商品を選び出すのは容易ではない」のは確かだ。だが、それはインデックス投信の「623本」でも似たようなものだ。どちらも十分に多い。荒木記者は「4400本から選ぶのは大変だけど、600本からなら簡単に選べそう」と感じるのだろうか。

記事には「過去10年の平均リターンランキング30」という表も載っている。これも問題ありだ。記事では以下のように説明している。

【エコノミストの記事】

5038本の公募株式投信から日本株の投信に絞り、過去10年の運用成績(手数料控除後)が高い順にランキングした。さらに過去10年間を単年度ごとのTOPIXに連動するインデックス投信の平均リターン(配当込み)を何回上回ったかを示した。この回数が多いほど、さまざまな要因で市場が変動する中でも、安定的に運用されていたかを計る目安になる。



◎TOPIXと比べても…

見出しにもあるように、このランキングでは「中小型株運用が上位に」来ている。ただ、中小型株を投資対象とする投信の運用成績を「TOPIXに連動するインデックス投信の平均リターン」と比べてもあまり意味がない。「中小型株運用」に関して、「さまざまな要因で市場が変動する中でも、安定的に運用されていたかを計る目安」にするならば、「TOPIXに連動するインデックス投信の平均リターン」ではなく、中小型株を対象としたインデックスと比べる必要がある。

今回、「中小型株運用が上位に」来ているのは、全体として大型株よりも中小型株の方が「過去10年」のパフォーマンスが良かったからではないか。ランキング上位に来ているのだから中小型株のインデックスにも勝っている投信だとは思うが、比較対象は適切に選んでほしい。

付け加えると「さらに過去10年間を単年度ごとのTOPIXに連動するインデックス投信の平均リターン(配当込み)を何回上回ったかを示した」という文がやや拙い。「過去10年間を」は「過去10年間に」でないと成立しないような気もする。改善例を示してみたい。

【改善例】

さらに、TOPIXに連動するインデックス投信の平均リターン(配当込み)と単年度ごとに比べ、過去10年間で何回上回ったかを示した。


※記事の評価はC(平均的)。荒木宏香記者への評価はCを維持する。

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