2017年6月17日土曜日

悪くないが気になる点も…日経ビジネス特集「石油再編の果て」

日経ビジネス6月19日号の特集「石油再編の果て~迷走する経営、爆発する工場」は悪くない出来だ。JXTGホールディングスや出光興産から取材協力が得られくても石油元売りの問題点に斬り込んでいった姿勢は称賛に値する。ただ、記事には引っかかる部分もあった。日経BP社に問い合わせを送ったので、その内容を紹介したい。
行橋駅(福岡県行橋市)※写真と本文は無関係です

【日経BP社への問い合わせ】

日経ビジネス編集部 金田信一郎様 吉岡陽様 松浦龍夫様 飯山辰之介様

6月19日号の特集「石油再編の果て」についてお尋ねします。「PART3 爆発する工場 なぜ事故が頻発するのか」という記事の中に「原油を精製すると、ガソリンや灯油といった高値で売れる油(軽質油)と重油などの価格の低い油(重質油)が取れる」との記述があります。この説明に従えば、軽質油や重質油は「原油を精製」してできるもので、「ガソリンや灯油」は軽質油の一種、「重油」は重質油の一種となります。しかし、重質油も軽質油も原油そのものではありませんか。

デジタル大辞泉によると「軽質油」は「ガソリン・灯油・ナフサなどが得られる、比重が小さく粘りけの少ない原油」で、「重質油」は「アスファルトや重油などが得られる、比重が大きく粘りけの強い原油」となっており、やはり原油そのものです。

記事には「現在の平均的な原油の価格は1バレル当たり約50ドル。それよりも5ドルほど安い『超重質油』の使用比率を、現在の2割弱からさらに高めていく」というヒュンダイオイルバンク副社長のコメントがあります。ここでは「重質油」を原油そのものとして扱っており、その前の記述と矛盾します。

「原油を精製すると、ガソリンや灯油といった高値で売れる油(軽質油)と重油などの価格の低い油(重質油)が取れる」との記述は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。

次の質問は「PART4 市場を開放せよ 新海賊と最後の護送船団」という記事についてです。この中に石油元売りの再編に関して「『常に、筋肉質の会社を、肥満体がのみ込む歴史だった』(橘川)。その象徴がJXTGで、三菱石油や九州石油、ジャパンエナジーを吸収し、精製設備と販売網を吸い上げて生き残りを図った」との説明が出てきます。

一方、「PART2 迷走する経営 薄利スパイラルの奈落」という記事では「1999年に拡大路線のツケが回って経常赤字に陥った三菱石油が日本石油と統合されて新日本石油(日石三菱)が誕生」と書いています。「拡大路線のツケが回って経常赤字に陥った三菱石油」を「筋肉質の会社」に含めるのは無理がありませんか。ここはどう理解すればよいのでしょうか。

言葉の使い方についてもお尋ねします。33ページの「一切の予断を廃して検討する」というくだりでは、「予断を廃する」ではなく「予断を排する」が正しいと思えますが、いかがでしょうか。36ページの「屈辱をなめた」という表現も引っかかりました。間違いとは言いませんが「屈辱を味わった」「辛酸をなめた」などとした方が自然ではありませんか。

質問は以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。今回の特集は全体として見れば評価できる内容でした。今後も批判精神あふれる特集を期待しています。

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間違い指摘の無視を続けていた日経BP社だが、6月13日に送った間違い指摘には回答があった。今回も回答があると期待したい。特集や担当者への評価はその動向を踏まえて決める。

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