2016年8月30日火曜日

読むに値しない日経ビジネス藤村広平記者の「時事深層」

日経ビジネス8月29日号に藤村広平記者が書いている「時事深層~米クラウド企業、日本企業に働き方改革迫る 『添付ファイル』は死語になる」は、読むに値しない内容だった。記事の冒頭で「米クラウド企業が、日本のビジネスパーソンに働き方改革を迫っている。メールにファイルを添付するといったムダの多い作業をなくすサービスを相次ぎ売り込む」と藤村記者は訴えるが、その中身はかなり苦しい。まずは最初の事例を見ていこう。
皇居周辺の桜と首都高速(東京都千代田区)※写真と本文は無関係です

【日経ビジネスの記事】

(シリコンバレーに本社を置く)ボックスは法人向けのクラウドサービスを手掛ける。Word文書やExcel資料、PDFなど120種類を超える書類をクラウド上に保存できる。保存先のアドレスを共有すれば、居場所が離れていても社内外の関係者との同時編集が可能だ。

ボックスは徹底して使いやすさを追求する。例えばパソコンで作ったプレゼンテーション資料をクラウド上に保存したとする。他社の既存サービスの場合、ほかの社員が携帯端末で資料を見ようとするとレイアウトが崩れ、読みづらいときがある。ボックスは携帯向けのプレビュー版を自動作成するので効率が落ちない。強味は「こうした工夫を数百と重ねている」(レヴィCEO)点にある。

世界では6万2000社を超える採用実績がある。有力企業では世界で約6割が使う計算という。ただし日本での実績は1000社強にとどまっていた

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ボックスのサービスは「日本のビジネスパーソンに働き方改革を迫っている」だろうか。このサービスを使えば社内外の人にメールで添付ファイルを送る必要がなくなるとする。それは便利なことかもしれない。だが「働き方改革」と呼ぶほどの話とは思えない。

そもそも「他社の既存サービス」がある上に、ボックスのサービスも日本で「1000社強」が採用している。クラウドサービスが「働き方改革」をもたらすものならば、既にかなり実現しているのではないか。

有力企業では世界で約6割が使う計算という。ただし日本での実績は1000社強にとどまっていた」と書くと、日本での実績が少ないような印象を受ける。「有力企業」の定義を藤村記者は明らかにしていないが、個人的には日本に「有力企業(知名度が高い上に、業界内で上位の実力を持つ企業という意味だろうか)」は1000社もないと思える。日本でボックスのサービスを採用している企業のほとんどが「有力企業」だとすると、日本では有力企業に関して「約6割」をはるかに上回る使用実績があると思える。

2番目の事例として出てくる「エバーノート」の「文書保存サービス」も似たようなものだ。「今後はAI(人工知能)を応用し、ユーザーが作業中、文脈に合う過去メモを自動表示する機能を加える」らしい。便利な機能なのかもしれないが「働き方改革」を迫るようなサービスでないのは明らかだ。

3番目の事例になると、さらに苦しくなる。そのくだりは以下の通り。

【日経ビジネスの記事】

IT改革は安全性の確保が悩みの種。ここに商機を探るのがセキュリティー製品を手掛けるアブソリュート・ソフトウエア(カナダ)。「情報流出の脅威はサイバー攻撃よりも内部の社員にある」とジェフ・ヘイドンCEOは話す。年内にも日本の担当者を2倍に増やす。

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ここに至っては「働き方改革」と何の関係もない。しかも、この会社がどんな強みを持つのかも謎だ。「日本の担当者を2倍に増やす」らしいが、増やして何人になるのかも藤村記者は教えてくれない。1人を2人にするのと100人を200人にするのでは同じ「2倍」でも大違いなのだから、具体的な人数は入れてほしい。

記事に出てくる事例は以上の3つだ。これで「米クラウド企業、日本企業に働き方改革迫る 『添付ファイル』は死語になる」という見出しを付けるのは、良く言えば度胸があるし、悪く言えば読者を欺いている。

百歩譲って、企業がクラウドサービスを積極的に利用すると、法人で「添付ファイル」はなくなるとしよう。だが、それだけでは「添付ファイル」は「死語」にはならない。個人が積極的に使う可能性が残るからだ。「死語になる」と見出しで言い切るのであれば、「個人も含めて添付ファイルを使う人はいないなるかもな」と思わせる内容にしてほしい。今回の記事ではそれが全くできていない。


※記事の評価はD(問題あり)。藤村広平記者への評価も暫定でDとする。

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