2016年3月1日火曜日

「証券化商品」はどこへ? 日経夕刊「プラチナ投資ブーム」

記事の最初の段落を「まとめ」的に作った場合、「これから、こんな内容を綴っていきます」という読者への宣言になる。その約束を堂々と無視した記事が、29日の日本経済新聞夕刊総合面に出ていた。「プラチナ投資ブーム 金に比べ大幅に値下がり コインや証券化商品」という囲み記事では、冒頭で「延べ板だけでなくプラチナを証券化した金融商品なども売れ行きを伸ばしている」と「宣言」しているのに、その後は「延べ板」にも「プラチナを証券化した金融商品」にも触れずに記事を終えている。見出しでにも「証券化商品」と入っていてこれでは困る。
石橋文化センター(福岡県久留米市)
            ※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

貴金属のプラチナ(白金)が投資商品として人気を集めている。通常なら金より高価だが、逆転して安くなっているため売れ行きを伸ばしている。日本で人気が高い金貨を販売するオーストリア造幣局は4月に純プラチナ製のコインを発売。延べ板だけでなくプラチナを証券化した金融商品なども売れ行きを伸ばしている

オーストリア造幣局は1トロイオンス(31グラム)サイズのコインをまずは5000枚製造する。純金製のコインに続き、需要が急速に伸びてきたプラチナにも手を広げる。他国に比べ金貨の店頭販売に勢いがある日本市場で7割に相当する3500枚を販売する計画だ

加工費なども加味した販売価格は、現在の国際相場で算出すると1枚13万円弱。販売代理店となる貴金属大手、田中貴金属工業は「資産用ビジネスの裾野が広がる」と期待を寄せる。プラチナは金に比べ景気の影響を受けやすい。

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最初に「貴金属のプラチナ(白金)が投資商品として人気を集めている」と書いているのに、それを裏付けるデータが全くないのも気になる。強いて挙げれば、オーストリア造幣局が4月に日本で純プラチナ製のコイン3500枚を発売することだろう。ただ、これも「他国に比べ金貨の店頭販売に勢いがある」からだそうで、プラチナが投資商品として人気を集めている根拠としては苦しい。

今回の記事は結局、「オーストリア造幣局が純プラチナ製のコインを発売する」という話だ。だったら始めから、正直にそう書けばいいのではないか。そして「オーストリア造幣局が純プラチナ製のコインを発売するのは初めてなのか」「純プラチナ製のコインは珍しいのか」などの情報を盛り込んだ方が、よほど読者に親切だ。

記事を書いた記者には「貴金属のプラチナ(白金)が投資商品として人気を集めている」という話に仕上げる気が本当にあったのだろうか。


※記事の評価はD(問題あり)。

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